第1章 始まりのナイトメア《宮侑》
〈side マネ〉
『よし、今日の仕事も終わり!』
時刻は午後8時半。
今日の練習はもう終わり、部員たちも帰宅済みである。
私はユニフォームの修繕作業が残っていたため、
北さんにその事を伝えてこの時間まで居残りで仕事をしていた。
正直、強豪と呼ばれるここ稲荷崎のマネージャー業はなかなかハードである。
部員も多く、練習時間も長いため仕事は山程ある。
でも大変さよりも、この素敵なチームの支えになれる充実感の方が大きい。
あの時東京体育館で見た最高のチームに、自分がマネージャーとしていま貢献できている事が何より幸せである。
マネージャーとして受け入れてくれた北さんには感謝しかない。
北さんは本当に尊敬できる主将だ。
誰より自分を律していて、チームを上手くまとめあげる姿はとてもかっこいい。
最近、気付くと目で追ってしまう自分がいる。
北さんに話しかけられると心拍数が上がって、顔が熱くなる。
もしかしたらこれが世間一般にいう恋ってものなのかな…そんな風に考えたりもした。
でも強豪の部活で、選手とマネージャーの恋など御法度だ。
何より恋愛するためにここに来た訳じゃない。
そう自分に言い聞かせて、この気持ちに蓋をする決意をした。