第1章 始まりのナイトメア《宮侑》
〈side 侑〉
稲荷崎高校男子バレーボール部。
俺らの所属している部活はいわゆる強豪って呼ばれるところで。
そんな強豪の部活をたった一人で支えてる縁の下の力持ち。
それが宇佐美穂花だ。
俺らの代まで女子マネージャーはおらへんかった。
選手目的で入ってきて仕事もろくに出来んようなヤツはいらんって部の方針だったらしい。
せやけどそんな伝統を変えたのが、穂花だ。
何せあの北さんに認められるぐらいやから、俺ら選手に負けんぐらいの筋金入りのバレーボール馬鹿や。
あのちっこい体でむっちゃよく働く。
見学に来てキャーキャー喚き散らしとる喧し豚共とは大違いや。
おまけに顔もかわええ。
好意を持ってる連中もわんさかおる。
マネを見るために俺らの練習を見に来る奴もいるぐらいだ。
この前も試合会場で他校の奴らに絡まれてたから、サムとガン飛ばしてやった。
まあ、そんな大勢から寄せられている好意にバレー一筋の穂花が気付いているはずもなく、今日も一心にマネージャー業に励んでいる。
マネの方に視線を移すと、部活の時は一つに束ねている髪が揺れている。
そこから覗く白い項に堪らなくそそられる。
「今日もええなあ」
そんな俺の呟きも、忙しなく動く穂花の耳には届かない。
穂花に一番近い存在は俺らや、と優越感に浸る日々やけど、当の本人が一番熱い視線を向けとんのは我らが主将、北さんや。
穂花は、その気持ちを隠してるつもりやろが、
俺ら2年にはバレバレや。
むしろ気付いてへんの北さんぐらいやないか?
たま〜〜に俺がスキンシップとっても、軽くあしらわれる始末。
試合のためのパワーチャージや言うと仕方なくと言った感じで許してくれるけど、全く眼中になし。
北さんに想いを寄せてんのは正直面白ないが、
まあ俺らがどうこう出来ることやないしなと思っていた。
そんなある日、
俺は見つけてしまったんや。
マネージャーの弱みを。