第2章 次なるミゼラブル《角名倫太郎》
そう話しかけると、マネージャーの動きが一瞬止まる。
数日前から髪を束ねる紐の色は、臙脂から黒に変わっていた。
「あ、、あれね。どこかに落としちゃったみたいで、、」
探してるんだけどねえ、何事もなかったかのように備品の捜索を再開する宇佐美。
でもその顔に明らかな動揺が見えたこと、そしてあの出来事を想起して頬が紅潮していることを俺は見逃さなかった。
少し経って、お目当ての物が見つかったらしい。
あったよ!と笑顔で駆け寄ってくる宇佐美を、勢いよく壁に押しつけた。
ドンっと音がする。少女漫画でよく見る所謂壁ドンってやつ。
備品が床に散らばった。
けど、そんなことはどうでも良くて。
俺は宇佐美の顔の横に手をつき、逃げ道を塞いだ。
『え、、すな、、?』
「ごめん、そこにあるのは知ってた。
あと本当の用事はそれじゃない。」