第2章 次なるミゼラブル《角名倫太郎》
あの日から3日。
当事者の2人に特に変わった様子はない。
宇佐美は侑に話しかけられると一瞬強張った様子を見せるが、すぐにいつも通りに戻る。
部活ではきちんと役割を全うしようとしているらしい。
なんとも健気で従順だ。
当の侑はそんなことお構いなしに、マネージャーの腰を撫でてみたり、項をなぞってみたり、やりたい放題だ。
痺れを切らした宇佐美が振り払おうとすると、侑が耳元で静かに囁いた。
「……ユニフォーム」
侑のその言葉を受けて、びくっとした様子のマネージャー。
赤く染まった顔で、懇願するように首をふるふると横に振っている。
抵抗を諦めたのか振り上げていた手を下ろし、大人しくなった。
それを見てにんまりと笑った侑は、スキンシップを再開する。
前からマネージャーへのセクハラ紛いは日常茶飯事だったので、部員はだれも気に留めない。
ただ、一線を越えた後のその行為は少し過激になっていることに俺は気付いていた。
まあ、そんなことはどうでもいいけど。
部活後が楽しみだなぁ。
これから起こることを考え、湧き上がる笑みを噛み殺すのが大変だった。