第2章 次なるミゼラブル《角名倫太郎》
「ねえ、今マネージャーの声がしなかった?」
「ん?宇佐美のか?いや、何も聞こえんかったけど、」
夕食のことばかり呟いている治に問いかけるも、答えはNO。
隣の治に聞こえていないなら、気のせいかもしれない。
その時、ある一つの考えが浮かんだ。
侑のロッカーを確認してみると、まだ荷物が置いてある。
つけっぱなしだった蛍光灯。
そして落ちているヘアゴムと宇佐美の声。
今までの違和感が確信へと変わった瞬間だった。
もし俺の考えが本当だったら、なかなか愉快なことになってくるなあ。
侑もやってくれるね。
そんな風に考えつつ、治には見えないように臙脂色のヘアゴムをポケットに仕舞った。
「じゃあ帰ろうか、治」
わざといつもより大きめな声で言う。
治は首を傾げていたが、大して気にも留めず「そやな」と言って2人で部室を出る。
「あ、ごめん。部室に忘れ物したわ。先帰ってて。」
校門をくぐったあたりで、そう告げて治と別れる。
そのまま部室へと向かった俺の耳に、聞き覚えのある男女の声が聞こえてくる。
静かに扉の前まで近づくと、声の主がはっきり分かった。
自分の推理が当たっていたことを確信し、自然と口角が上がる。
ポケットからスマホを取り出し、録音ボタンをオンにした。
こんな面白いこと、利用する以外ないでしょ?