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【イケメン戦国】雑記こもごも—短編集―

第6章 悩み悩まし(家康)


病や薬草、漢方を学ぶ自分には人体を理解しようとする姿勢がある分、女性の身体事情も冷静に聴ける。
けれど恥じらいがあまりに無いことに、五百年後の女の羞恥心の在処が見当つかない。

それにしても、我慢できないと頼りに来てくれたのは家康としても嬉しいというのが本心である。
改めて夜長と見つめ合う。

大きな黒目がちな目はいつもまっすぐで、その透明感に最初は居心地が悪くなっていた。
けれど今は、その目が自分を見つめているのが嬉しい。

「それは正解。変に恥ずかしがられて隠したり我慢されるより、こうして話してくれる方が嬉しい。俺が言ってるのは佐助の事。佐助でなくても医者以外の男にそういう話をするのは駄目」
家康の言葉に夜長は「心外だ」と首を振る。
「しないよ!それは私だって恥ずかしいよ!ただ、言葉が分からない事に関して佐助君を頼っちゃっただけ!!」
今になって顔を赤くする夜長に家康は呆れた。

照れるのはそこなのかと。
時代差故の言葉知らずを恥ずかしがる前に、もっと憚らない点について恥じらってほしい。
この調子で「話しやすいから」「知っていそうだから」と、光成あたりに話されたりすれば色々と取り返しがつかない気がし、苦悶する。

これはきちんと話しておかなければと思いつつ、あまり責めるのも良くないとひとまず我慢した。

「でも、俺にも関係あるって言ってくれたの、嬉しかったから許す」
抱き締めて言うと、夜長も「ありがとう」と身を任せてくれた。
やわらかい、小動物のような温もりと重みが愛おしい。
「あんたの身体は俺の物だから。関係あるよ」
滑らかな絹糸のような髪を撫でながら甘く言うと、夜長も小さく笑ってさらに身体を寄せてくる。
「うん。それに、子供でも出来たら大変だもんね。良かった、ちゃんと話せて」
夜長の言葉に概ね心地よくなりながらも、言い回しに引っかかる。

「……子供が出来たら大変の「大変」って、そのままの意味?」
「え?大変は大変、でしょ?一大事というか、困っちゃうというか」
「一大事だけど、なんで困るの?」

甘い気持ちが一瞬で引っ込み、再び戸惑いと苛立ちに襲われる。
「あれ?」
身体を離して見つめ合う。


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