第5章 患い煩い(家康)
「健康なら、もちろん良いんだけど。……家康の寝顔がちょっと、具合悪そうというか、疲れて見えて。もしかしたら何か悪い事を隠してるんじゃないかなって思ったの」
「俺の寝顔?」
家康が益々怪訝な顔になり、問い返す。
「うん。昨日、夜中に目が覚めて偶然見たんだけど、寝苦しい感じだった。考えてみたら最近忙しそうだったし、朝も口づけた時になんだか家康の身体がぎこちない気がして。気になったの」
家康は夜長の言葉を聞きながら、何故か不機嫌な顔になり、どこか呆れてもいる。
そして夜長の話を聞き終わると大きなため息をついた。
「俺が寝苦しそうにしてたから心配したってこと?だから今朝は早かったの?」
「うん……。隠し事されてるのかなって、心配になっちゃって。それに、話してほしいから寂しくって」
「あんたさ、俺があんたを抱かなくて何日経ったか知ってる?」
唐突に尋ねられ、思わず顔が赤くなる。
「なっ……なんで?」
「いいから。答えて」
「……十日くらい、でしょ?」
記憶を手繰りつつも答える。
すると家康の手が伸びて夜長の片頬をふにっと摘まんだ。
「十三日」
「え……?そんなに、だっけ?」
驚きながらも、そんな事を正確に数えていた家康に驚く。
「そんなに、だよ」
しかめっ面で言う。
「でも、それがどう繋がるの?やっぱり疲れてるとか、具合が悪いっていうこと?」
「……あー、もう。馬鹿らしい」
加減なく抱き寄せられて夜長は家康の腕に閉じ込められた。
「家康?」
「俺は、あんたがねだってくれるのを待ってたの。いっつも俺が欲しがって、たまにはあんたに欲しがらせようと思って抱かなかったら、ちっともあんたはねだらないし。それどころかぐっすり眠ってるし。何日経っても俺が抱かないのを気にしないし、普段と少しも変わらないで口づけだけでも機嫌よく送り出してくるし。……もう限界で拗ねてただけ。もし寝苦しそうだったんなら、欲情を我慢して煩悩と闘うのに疲れてたからでしょ」
家康は不本意ながらも真相をぶちまける。
ヤケになってもいた。
「……病気とか、本当にないの?」
驚きながらも改めて尋ねる。
「病気ならあんたのせいでしょ」
少し身体を離して夜長の腕を掴み、夜長の手を自分の胸に当てさせる。