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【イケメン戦国】雑記こもごも—短編集―

第5章 患い煩い(家康)


夜長が家康の異変に気付いたのは新月の夜だった。

二人で家康の駿府城に暮らし始めて、毎日と言っていい程に夜は身体を重ねていた。
けれど、仕事の忙しさや視察が重なり、加えて夜長も新しい羽織と袴仕を立てることに没頭していた為、二人とも夜は身体を寄せ合いつつもすぐに眠るような日々が続いていた。
けれど、最後に身体を重ねてから十日は経っている。

夜長がその事に思い当たったのは、夜中に喉が渇いて起きた時、隣で眠る家康の寝顔がひどく疲れて見えたからだった。

お互いに自分の事に忙しくしていたが、食事は出来る限り一緒に摂るようにして、夜も家康が抱きしめてくれる腕の中で眠っていた為に十日も身体を重ねていないという実感がなかったのだ。
朝も口づけ、家康も帰ってくると口づけてくれている。
気持ちは通っている。

けれど、十日も家康が触れてこないのは考えてみれば不思議な気がした。
そして、もしかして体調が悪いのを隠しているのだろうかと思い当たる。
普段から寝顔もややしかめっ面な家康だが、今は疲労が滲んでいて、やや苦しげにも見える。
そう思うと夜長は胸がざわめく。

「もう隠し事はしない」と約束したけれど、家康の天邪鬼も強がりも筋金入りだ。
夜長を心配させない様にと隠しているのではと疑ってしまう。

けれど、眠っている家康を起こして問いただすのは気が引ける。
夜長はそっと家康の髪を撫でて、頬に口づけを落とす。
「……家康、一緒にいるんだから、もっと家康の事を教えてね」
眠る家康に囁くように言い、再び家康の胸に顔を寄せて眠りについた。

「おはよう」
家康が目を開けると、珍しく夜長が先に起きていた。
「……おはよ。珍しいね、あんたが先に起きてるの」
寝起きのかすれた声で一度強く抱きしめてから身体を起こす。
「うん、なんだか早く目が覚めたから、家康が起きるまでうとうとしてたの」
「ふーん。……早起きに慣れてないでしょ?まだ眠そう」
夜長の頬に手をあてて顔をしかめる。
心配している時の目だった。
夜長は胸が少し軋む。

心配なのは家康の事なのに、そんな目で心配しないでよ、と言いたくなる。
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