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【イケメン戦国】雑記こもごも—短編集―

第4章 虎でも猫でも(謙信)


気を悪くしたり戸惑うのなら分かるが、涙が出る程笑うとは意味が分からなさすぎる。

ただ、佐助の一言で自分がさせられない夜長の「涙が出る程笑ってしまう」という事が出来ないのが、やや気に喰わない。

しかし先日、佐助が不貞腐れた謙信に気を遣い、「夜長さん、「それとも私?」っていうのは謙信様にも通じるから」と言うと夜長は真っ赤になり、「あれは冗談だから言えるだけで、本気の人には言えないよ!」と慌てた。

その時は慌ただしかった為忘れていたが、日が暮れて仕事が片付いた時に改めて問うと、夜長は最初ずいぶん口ごもったが、謙信の追及に最後は可愛らしく恥じらいながら、「夕餉になさいますか?それとも湯浴みになさいますか?……それとも、私になさいますか?……でしょうか」と小さな声で言い、謙信を大いに煽ってくれた。
「「冗談なら平気で言える」とはどういう貞操観念だ」と文句を言いながらも、勿論夜長を一番に済ませたのは言うまでもない。

「そう、タンスにゴンだね。私、見た事ないはずなのに何故か知ってる」
「俺も見た事はない気がするけれどどうなんだろう。でもタンスにゴンは全国共通だよね」
「もう、こんな事で笑うなんて思わなかった」
夜長はまだクスクス笑っている。
「俺も一人では笑えないから。通じないし」

「でも、やっぱり馴れない風俗はどうしてもあるかな。今考えても仕方がないけれど、この間のお月見の時に二つ名の話をしたでしょう?」
お茶と茶菓が用意され、謙信も自分の机を離れてくつろいだ。
佐助が茶菓のあられをつまみ、夜長は彩の美しい干菓子をつまんでいる。
「したね」
「ああいう出世魚みたいに名前が変わるのって、私の感覚だとちょっと違和感があって。勿論そういう風習があるっていうことくらいは知っていたけれど。呼び方を変えるのって違う人になるみたいで愛着が捨てられない気がするの」
「まぁ、実際に別人として扱うようなものかもしれないな。立場によるだろうし。俺たちの時代でも呼び方くらいは変わってただろ?愛称とか君付けちゃん付けとか」

のんびりと話しながら茶を飲む二人に比べ、謙信は「またくだらん話を」という顔をしている。
「まぁ、そうなんだけど」
おしゃべりをする佐助と夜長に、謙信が面倒臭さそうに口を挟む。
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