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【イケメン戦国】雑記こもごも—短編集―

第3章 名月や(謙信)


「これは小さい包みなのが大事なの」
夜長が言い、佐助に「ありがとう、信玄様もいらっしゃっている時にこれがあるなんて」と礼を言う。

佐助も幸村の隣に落ち着き、「こればかりは俺も夜長さんと同じくらいに感慨深いよ」と答える。
「それで、菓子がなんなんだ?」
謙信が夜長と佐助の会話に焦れる。
「えっとですね、説明する前に信玄様から召し上がっていただきたいんです」
夜長が包みを一つ持ち、信玄に差し出す。
「俺がか?光栄だが、君の恋人が大層不満な顔をしているぞ」
信玄に言われ、夜長は謙信を振り返る。
確かに表情にはあからさまには出ていないが不満そうではある。
「謙信様、すぐに訳を説明しますから。きっと謙信様も納得されますから」
夜長に言われ、謙信は「構わん。甘味に興味は無い」と素っ気なく言う。

「ではお言葉に甘えて」
信玄が包みを受け取り、中身を開ける。
白い小さな四角い団子が三つ入っていた。
「信玄様、こちらのきな粉と黒蜜を掛けて召し上がって下さい」
佐助が別の風呂敷に入れてきた二つの椀を出し、匙をそれぞれに挿す。
「……見た事の無い菓子だが」
信玄が首を傾げながらも言われた通りにまずきな粉をまぶし、包みの上で零れない様に黒蜜を掛ける様子を全員が見つめている。
中でも夜長と佐助は明らかに期待に目を輝かせており、信玄は戸惑い、幸村と謙信は訝し気である。
「……どうですか?」
楊枝で一つ口に入れた信玄に夜長が尋ねる。
「ああ、美味いが。……団子というより、つきたての餅だな」
信玄の言葉に夜長と佐助が「そう!餅なんです!!」と殆ど同時に言う。
「……まだ分からん。団子でなく餅なのが何故そう楽しい?」
謙信がいい加減に説明しろという顔で問う。

「あのですね、これは「信玄餅」という名物なのですが」
夜長が話そうとすると信玄が思わずむせそうになる。
「何だ、その名前は!どこの誰がそんな間抜けな組み合わせで俺の名前を勝手に使って商売してるんだ?」
珍しく顔を顰める信玄に謙信は意表を突かれたような表情になり、幸村は「信玄餅って」と笑っている。
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