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【イケメン戦国】雑記こもごも—短編集―

第3章 名月や(謙信)


「確かに、人間性が出るな。俺は何事もどんぶり勘定だが、謙信は愛想が無い割に義理堅く律義だ。うん、お前は良い教えをされているようだ」
「もう、揶揄わないでください。謙信様は優しいです。確かに気難しい印象を持たれやすいですが、意図的に威圧したりもしません!謙信様も誤解しないでくださいよ?」

信玄には怒った顔だったが、謙信には困った顔で言う夜長はやはり愛らしい。
表情がくるくる変わり、どの表情もまぶしいのだ。

信玄の戯言に「謙信の名誉にかけて」とでもいう勢いで擁護するのも、まるで信玄に向ってどれだけ謙信を好いているか訴えているかの様で嬉しくはあるが、それでも嫉妬はおさまらない。

「……お前の話は一つ一つは分かるが、それでも男の数が気になるぞ」
「ですから、そういう話ではなくてですね」
「数を教えるくらい簡単だろう?」
語調は静かだがひたひたと不穏な響きが滲んでいる。
「謙信様!」
「早く言え」
引き下がらない謙信に夜長も遂に声を荒げる。
「もう、知りません。謙信様が初恋です!それでいいじゃないですか!」
夜長はとうとう声を荒げ、「お酒をお願いしてきます」と席を立ってしまった。

「「それでいいじゃないか」とはぞんざいな言い草だ」
不満なまま、夜長の背中を見つめながらぼやいて盃を傾けた。
散々男性陣に揶揄われたと怒っている夜長に比べ、信玄は思わぬ情報に愉快がり、謙信は不機嫌なまま、幸村は居心地の悪い顔をしていた。

そうこうしつつ酒が進む中、佐助の声がした。
「遅れました」
一礼して現れた佐助に信玄と幸村も楽し気に「先にやっているぞ」と笑う。
佐助は風呂敷を二つ提げていた。

「どうぞ続けてください。夜長さん、これは差し入れ。以前興味を持っていたから団子屋に頼んで近い物を再現してもらったんだ」
手に提げていた風呂敷を夜長に差し出す。
夜長は「ありがとう」と言いながらも不思議な顔で風呂敷を開く。
「あっ!」
思わず声を上げ、そして笑顔になる。
「何だ?」
謙信が問う。
信玄も幸村も風呂敷から出てきた大量の小さな包みに首を傾げる。
「団子屋ということは、団子の類だろう?」
信玄が言う。
「それにしても小さな包みだな」
幸村も感想を言う。
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