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【イケメン戦国】雑記こもごも—短編集―

第3章 名月や(謙信)


「私の事なら大丈夫です!誰にとっても初恋は特別ですから、いつまでも大事に想っていて良いんです!!」
慌てて言う夜長に謙信が驚いた表情をし、信玄も珍しく微笑みを失う。

「……夜長、君の初恋は?」
あえて軽い調子で信玄が問う。
それも謙信が聞きたそうだが躊躇しているのを汲んでやった結果だ。
何より、謙信が取り乱して暴れては折角の宴が惨状になってしまう。
夜長は取り敢えず謙信が激高する事なくおさまりそうであることに安心し、苦笑いする。

「そうですね。いつでしょう。五歳の時に年上のよく遊んでくれた男の子に花を摘んでもらった時にとっても嬉しかったのですが、初恋という程のものではないですね。十歳の時に同じ年の男の子でよく話す子がいましたが、その子でしょうか。男女という仲で言えば高校……ええと、十六歳の時に初めてお付き合いをした人がいましたが喧嘩別れをしてしまいました。私もまだよく男女の事が分からないままだったので、つまらない事で喧嘩をしてしまったんです。私は男の人とは長く続かないので余計に絵を描いたり針仕事に没頭してしまったのかもしれませんね」
懐かしそうに笑う夜長に一同が呆然とする。
「……恥じらいもせずつらつらと語るとは面白い。見かけによらず華麗な男遍歴があったのか」
感心したように言う信玄に夜長は慌てて首を振る。
幸村は何を想像しているのかやや顔を赤らめ、謙信は逆に顔色が悪い。
「そ、そんな大した事じゃないです!すぐに喧嘩してしまうという、だからその、男の人とのお付き合いが下手だという、若気の至りみたいな、失敗とか、反省の話です!!」
「しかし人数が多そうだ」
信玄がやや意地の悪い微笑を浮かべる。

信玄の基準で、関わり合った全ての男性と身体を重ねたと思われては困る。
夜長は全力で否定した。
「そんなことないです!私が言いたかったのは、恋仲の約束を口ではしても、結局向き合ってこなかったなっていう、そういう話です!」
「だが初恋は特別なんだろう?」
「それは、その、綺麗な思い出としてふと微笑ましく思い出すという、そういう意味ですから!」
信玄の追撃に夜長は顔を赤らめてしまう。
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