第5章 サキの術・暗部時代
「かかしは、私を覚えてた。だったら…何しにここに来たか、知ってるはずだよ」
「また…俺を置いていくのに?」
それを言われると、胸が痛い。
狐の面で顔は見えないまま。
でも君の色は、私と再会できたことで、ほんの少し色に変化が出たんだよ?
かかし、ありのままの自分、出せなくなってるんだね…
感情も殺して、暗部として、たくさんのことにのまれて、また息をして、またのまれて…
面をしてたって、君の心はわかる。
それが、敏感な私には細胞レベルで感じるのだ。
さらに真っ赤になった空の差し込む夕日が2人を照らす___
「なんで…サキが泣くの…?」
そう言った君の声は、ほんの少し動揺してる。
これは、かかしの感情。
細胞レベルまで感じたかかしの心の叫びが、私を通して、私の眼からあふれる。
「私じゃない…これは…かかしの感情…かかしの心の叫び…」
静かに、でもとめどなく流れる涙は止まることをしらない。
それを見つめる君は、何を思う?
あれだけ動かなかったかかしが、そっと面に手をかけ、ゆっくりとはずす。
そこには、もう少年とは違った、大人の男らしさの混じる綺麗な整った顔が、瞳を揺らして、私の前に現れた。
「俺の代わりに…泣いてくれてるの?」
静かに頷いたあと、私は君に問う。
「いつから…そこまで感情を押し殺すようになったの?」
すると、眼を泳がせた後そらし、何も言わない君。
「オビトくんと、リンちゃん、お父さんの意志も忘れちゃった?」
「違う、そんなことない!」
そこだけは、大きく否定する。
「じゃあ…いつからそんな…死に急いでるの?」
君は、あれだけそらしていた眼を私にむけて見開いた___
君の暗闇の中には、もう自分のことなんかどうでもいいといった、死相のオーラもでていた。
かかしは、間違いなく、いつ死んでもいいと思っている。
「‥‥サキには、やっぱり…隠せないんだね…」
そういう君はその場にしゃがみこんだ。