第5章 サキの術・暗部時代
また記憶のフィルムがめぐっていく。
帰れないってことは、まだかかしの闇はあるのか…
早送りのように流れるかかしの記憶のフィルムを眺めながら私はため息をつく。
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次に顔を上げると
ここは、木の葉の里が見渡せる火影岩の上。
少しピンクの雲がすじ状に流れ、もうしばらくすると夕焼け時といった感じか。
そこにいるはずの君は、いない___
少しずつ絶壁のほうへ歩き出す。
徐々にピンクから赤く染まっていく空は、寂しさと悲しさが入り混じるような刹那。
絶壁近くにたどり着くと腰をゆっくり据える。
「かかし…だね?」
音もなく後ろに立つ気配にそう尋ねる。
「サキ…」
そう言われて振り向くと、そこには小さかった面影はなく、私よりも伸びた背に鍛え抜かれた体。
少年から抜け出し、あの頃とは比べようもなく背伸びしたような、また大人に近づいた君。
そして、暗部の狐の面をつけ、すべてを隠してしまった姿。
やっぱり君は同じように孤独の渦に包まれていて、でも前とは違って、たくさんの感情も泣くことも忘れてしまった、暗闇に立ち尽くす、一本の葉のない木のよう。
「かかし…」
そういって手を差し出すが、君はそれすらも受け入れてくれない。
「何しに…きたの‥」
あれだけ心を開いてくれていた君は、もう誰も寄せ付けないような、冷たい雰囲気。
握られることのない手を、ゆっくりと自分のほうへ戻す。