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闇・色

第4章 サキの術・少年時代2


「それから、次はかかしの右手…」

そういうと、かかしは右手を差し出した。

まだ少年だから小さくて、柔らかくてかわいい手。
その右手からは、大きく黒い蛇が巻き付くように、君の右腕全体を覆っていた。
その中にある、少し薄紫色のピンクにも見える糸のような絡みつくもの。


「この右手にも、リンちゃんの意志がまだかろうじて絡みついてる…」


「…リン…」



「リンちゃんは自らかかしの前に飛び込んだんだよね?」

「うん…でも俺が殺したことには…変わりないから…」

右手を撫でながら、感じる。



「リンちゃんて、きっとかかしのことが好きだったんだろうね」

そういう私に、君はなんで知ってるの?
というように私を見上げる。

「俺には、オビトとの約束があったし…
リンを守ることに必死だった…それにリンの気持ちには…」

そこまで言って君は目をふせた。


「リンちゃんから感じる心の色は、悲しみ、そしてもう一つは愛情…悲しみの理由はきっと…里を守るために、その役目としてかかしを選択したこと。かかしに罪を与えた悲しみ。愛情は、かかしを含めた里を守りたいと思う気持ち、そして大好きだったかかしへの気持ちと、そのかかしに殺してもらえたこと…」

「そんなっ!?…なんでそれが、それがリンの気持ち!?
リンは俺を恨んでるはずっ」

「リンちゃんは…小さくても心は立派な大人の女性だね。
今この戦争世界でさ、誰に殺されるかもわからない時代で、誰を最後、自分の眼にうつして死ぬか…
今のかかしにはちょっとわからないかもしれないけど、リンちゃんにとって、好きな人を最後目にうつして、その好きな人の手で里を守るために命を絶つことは本望だったんだよ」

「…っ…そんなことって…」

君は左手で右手を握りしめ、また涙をこぼす。
今度は右目と左目、両方から。

それは、かかし本人と、そしてきっとオビトくんの涙___



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