第1章 めんどうごと
男は困った顔で口に手を当て、考え込む。
「あの…道具があれば私、自分で処置ぐらいはできるわよ」
一転して、男は驚いた表情を見せる。
「なんですって?…なんて逞しい女性なんだろうか。我が学園の生徒にも見習って欲しいものです。でも、本当に大丈夫でしょうか…?」
「ええ、平気。ここまで運んでくれてありがとう」
お礼を言うと、男を顔を両手で押さえてボソボソと小さい声で何かを言い始めた。
「なんて良い子…あの問題児たちに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい…」
「……?え、ええっと?」
問題児…この人も苦労しているのかしら。
「では、私はこの後用事があるので少し離れますが、どうぞゆっくりしていてください。医務員の方が帰ってきたら、学園長のお客だと言えば大丈夫ですので」
「え?あ、ええわかったわ…?」
スンッ…と調子を戻した男は、注意することだけ話してすぐにどこかへ消えてしまった。感情の落差が激しいことに驚きつつ、やはりただものではないのだと実感した。
包帯を取り出し、足首を固定する。どうやら本当に軽くひねっただけだったようで、それほど時間はかからなかった。ピッと包帯の端を止める。思えば、こんな怪我したのは久しぶりだな。
たくさんのベッドが並ぶ医務室をじっと眺める。…学園って言っていただろうか、あの男は。つまりは、人がたくさん集まっている場所ということか。
「…瘴気が濃ゆいわね、ここは…」
恐らくだけど、ほぼ確信に近い。大量発生した瘴気、異変の原因はこの学園にある。教師か生徒かは分からないけど、誰かがとんでもない量の負の感情をもっているのだろう。紫と合流できないことには、何もできないわけだが……
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「いたーっ!!」
「うお、監督生!?派手に転んだな…」
飛行術の授業中、グリムのホウキに一緒に股がっていた僕は、完全に気を抜いていて、顔から地面に衝突してしまった。たらりと鼻から何かが溢れる感覚。
「は、鼻血が…」
「あーもう、ほら、医務室いくぞ。俺がついてってやるから」
「俺も行こう」
「あ、ありがとう…エース、デュース」
「よそみするからいけないんだゾ」
我ながらマヌケだなァと思いながら、医務室へと歩を進めた。