第1章 めんどうごと
「~~~!!めっっっちゃ美人…!!見たか?おい、美人…!!」
小声ではしゃぐエースを僕とデュースでなだめる。グリムはというと、満面の笑みを浮かべるエースに少し引いているようだった。
状況の説明として…奥のベッドから良い匂いがするという言葉を聞いた瞬間、グリムを除いた僕ら三人は、光の速さで奥のベッドまで移動した。多分、僕史上最速だったと思う。
近くまでいくと、かすかに寝息が聞こえてきたので、カーテンの隙間から中を覗いた。そこには、ベッドに左頬を沈ませて眠る、美少女がいた。頭の大きなリボンは、まるで彼女のためだけにあるものなのではと思うほど、かなり映えていた。
「…デュース、デュース?」
「…………はっ」
「見惚れてたな…」
驚いた。この世にこんな美少女が存在するんだな。
「……学園長の援交相手…か」
「「言うな」」
あれこれ言い合っていると、美少女はゆっくりと目を開け、体を起き上げた。三人と一匹ともに慌ててカーテンから離れ、遠くから様子を伺う。
シャッとカーテンが開き、美少女はこちらの存在を確認したようだった。
「…ここの生徒さんたちかしら。悪いわね、ベッド借りたわよ」
「あ、はい…」
しずしずと立ち上がり、近くの椅子に腰かける。目が合い、思わず視線を下に向けた。あれ、足首に包帯…怪我人なのかな。
「気になる?ちょっと足ひねっちゃったのよ」
「なるほど……って、すみません、じろじろ見て……」
「いいわよ、別に」
こちらの視線を感じ取ったのか、美少女は僕の疑問に答えてくれた。人を観察することに慣れているようだ。
「おい、お前。エンコーって何か知ってるか?」
「はあ?」
「ちょ、ぐぐぐグリム!!何言ってんだ!!」
「お前らに聞いても教えてくれないからこいつに聞いたんだゾ」
あまりにデリカシーが無さすぎる。エースとデュースとでグリムを押さえる。構わず大戦犯グリムは続けた。
「こいつらが、お前が学園長のエンコー相手じゃないかって言ってたんだけど、なんのことだかわからないんだぞ」
「なっ…」
こいつ余計なことを…!!
美少女は一瞬驚いた顔をしてみせ、少ししてから訂正をした。
「なるほどそういうこと。残念ながら、私は援交なんてしてないわよ。ただの学園長の客」