第1章 めんどうごと
荷物を背負い、どこもかしこも巨大な目玉だらけの空間を歩き続ける。いつ見ても、常人なら発狂ものだわ、これは。
「長旅とは言ってたけど、実際はどれぐらい時間がかかるのかしら?」
前を歩く紫に訪ねる。紫は振り返らずに答えた。
「あら、霊夢ったら。もうおうちが恋しくなっちゃったのかしら~、可愛いわね。
そうね、どこの世界の瘴気か調査する必要もあるから…ざっと1、2ヵ月ってとこね」
気が遠くなりそうな数字に、思わずうへえと声が出る。これなら人里中のお祓いをして回った方が楽だったかもしれない。
「今から引き返すとか」
「ダメよ♡」
「うへえ」
改めて、辺りの目玉を眺める。やっぱり気持ち悪い。こんな空間に何日も住むことになるのか…と、私は既にかなり気落ちしていた。うーん、慣れてる私でも発狂しそう。
ふと横を見ると、目玉の大群の中にひとつだけ、キラリと光るものが目に入ってきた。よくよく見てみると、それが黒い鏡であることに気づく。なんとなく目が離せなくなっていた私は、無意識の内にその鏡に近づき、手を伸ばしていた。
瞬間、ぬ゛っと手が吸い込まれる。気づいた時には、既に体の半分が鏡に吸い込まれていた。
「っ…紫…!」
「霊夢!?ちょっとあなた、なにしてるの!?
ほら、手を伸ばして!」
事態に気づいた紫が、振り向いてこちらに駆け寄ってくる。足、胴、腕とズブズブと吸い込まれていく。鏡から漂う、瘴気。
「この鏡よ…!!」
最後にそれだけ叫ぶと、私の意識はプツリと途切れた。パリンと、何かが割れる音を残して…
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「…っう…いたた……なにここ、森…?」
魔法の森と似たような雰囲気。でも、違う。そうだ、私は紫と異変の調査に来ていて、それから……
「と、なると…あの鏡の中?」
鏡の中にしては現実味がありすぎる。まるで別の場所にワープしたかのようだ。なんにせよ、紫が助けに来るのを待つしかないが。1、2ヵ月かかるはずだった異変を数日で済ませられるかもしれない。一応はラッキーだ。
「いっっ…た…!」
激痛が走る。最悪だ、足をひねっている。…とりあえず応急処置を……
「おや…?そこに誰かいるんですか?」