第5章 いらっしゃいませ、御主人様
「あ」
兄は私の存在に気付くなり群がる女子達を擦り抜け私の元に近寄ってきた。
「可愛いメイドさん、遊びに来たよ」
クスと笑った兄を見上げる私の目は既にトロンとしていて、
今すぐにでも抱き付きたいぐらいだ。
「いらっ、しゃい…ませ…、っ!」
はぁ、と息を吐き蹲く秘部に耐えながら呟いた瞬間、
いきなりバイブの振動が強くなり一瞬体を大きくびくつかせてしまった。
ーーもしかして!?
私は耐え切れず膝から落ちてしまい、兄のすぐ足元に座り込んでしまった。
その瞬間、私は悟った。
兄はズボンのポケットの中で、バイブのコントローラーを使いパワーを強くしたのだ。
「柚!」
何も知らない友達が私の元に近寄ってきて心配するところ、
兄は膝を曲げ腕を伸せばそのままお姫様だっこをし私をだきかかえたのだ。
「ごめんね、妹は体調悪いみたいだ。保健室借りるよ」
クスと目を細め周りの友達に呟くと、
一瞬で女子達の目はハートになり胸ときめくような表情になった。
「ぁ、おに…」
「いいから」
まさかの状況に顔を真っ赤にした私が呟こうとすると、兄は一言呟き教室を出る。
そして沢山の来場者で賑わう廊下を堂々と歩き始めた。
「…」
そんな私達の背中を橘は鋭い目線で見つめていた。