第4章 色々と問題はありそうです
「買えないなら作っちゃえば? あのタルトも全部トレイくんが作ったやつだし」
「あのタルト、トレイ先輩が作ったの? すげー! 売り物みたいでしたよ」
意外な特技にみんな目を見開いてトレイ先輩を見る。
エースの反応でタルトがいかに素晴らしいものだったのか容易に想像できる。 いいな~。
「はは、ありがとうな。 確かに器具や調味料なんかは一通り揃えてあるが……タダで提供するわけにはいかないな」
ですよね。
「金とるのかよ~」
「はは、後輩から金を巻き上げるわけないだろ」
お金じゃないなら一体なにをさせられるんだろうか……
身構えていると、想像もしなかったお手伝いをお願いされた。
「次にリドルが食べたがってたタルトを作るのに栗がたくさんいるんだ。 集めてきてくれないか?」
『それぐらいならお安い御用です。 ね』
「めんどっ。 で、どれくらい栗が必要なんすか?」
なんでもすぐ文句を言うんだから……
「『なんでもない日』のパーティで出すとすると2~300個くらいかな」
「「そんなに!?」」
『え……えぇ!?』
「栗に熱を通して皮を剥いて裏ごしするところまで手伝ってもらおうか」
ちょっと待てよ。 約300個の栗を拾うのも大変なのに、さらにあのトゲトゲを……
『あ〜そういえば学園長に呼ばれてるんだった』
「そうだったんだゾ。 じゃ、オレ様たちはこれで」
「僕もだ」
「薄情者!」
逃げるために腰をあげようとしたとき、向かいに座っているエースに腕を掴まれた。 絶対に逃がすまい掴まれている腕が痛い。
「ふぎゃっ!」
逃げられない以上、私を見捨てて逃げようとするグリムの尻尾を掴んで道連れにする。
「まーまー! みんなで作ってみんなで食べたら絶対美味しいって」
「寮長には内緒だけど、マロンタルトは作りたてが一番美味いんだ。 出来立てを食べられるのは作った奴だけだぞ」
『え!? タルト食べられるんですか! なんなりとお申し付けくださいませ』
「おうおうオマエら! 気合入れろ! 栗を拾って拾って拾いまくるんだゾ!」
「精一杯頑張ります!」
「お前ら変わり身はえーよ!」
こちらは食糧難なんだからご馳走に有り付けるならなんだってする。
放課後、栗拾いに勤しむとしよう。