第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
辺りを見回しても見当たらない。
『あの子どこ行ったの!?』
「あっ、窓の外を見てみろ! あの中庭を横切る毛玉は……」
廊下の窓を覗くと中庭に見覚えのある毛玉が。
『グリムーーー!!』
窓を開け放って力の限り叫ぶ。
「ふなっ!?」
私を見るなり「げっ、見つかった!」といった表情で走り出した。
『待ちなさぁあああい!!』
全速力で走ってもひとりじゃグリムを捕まえられない。
どうしようと考えを巡らせていると、
「ね、グリムを捕まえるの手伝って欲しい?」
『で、でもお高いんでしょ?』
エースのこの笑顔は嫌な予感しかしない。
「購買のチョコレートクロワッサンでいいぜ!」
「なら、僕は学食のアイスカフェラテで手を打とう」
コイツら……!!
昨日スッカラカンだとは言ったけど、実は学園長からメインストリートを掃除した分のお金は貰っている。
エースは私がお金を持っているのを知らないはずなのに何故物を条件にっ! しかし今は緊急を要する。
グリムが授業をサボったら学園長になんて言われるか……
『エース様! デュース様! どうかお力をお貸しくださいませ!』
「交渉成立! んじゃ、ダメダメ監督生殿の尻拭いといきますか。 デュースくん」
「ああ、エースくん。 昼食が楽しみだな」
『ッく』
なんでこんな時だけ息ぴったりなの……
急いで中庭へ向かい、エースが網でグリムをデュースの方へ追い込み、デュースがお得意の大釜で封じ込んだ。
「やーだやーだー! つまんない授業は嫌なんだゾー!」
『黙らっしゃい! ナイトレイブンカレッジの生徒になった以上そんなわがままは許しません!』
「くそー! 学園長みたいなこと言いやがってー!」
『監督生としての務めを果たしてるだけです。 それに……』
エースとデュースには聞こえないようグリムの耳に顔を寄せ、小声で喋る。
『グリムのせいで食費がほとんどなくなっちゃったんだからツナ缶はナシ』
たくさん作れて腹持ちのいい物でなければ食費が持たない。
サボろうとした罰としてツナ缶のお預けは当然。
「そんなぁ~」
再び逃げ出さないよう今度は小脇に抱えて次の授業へ向かった。