第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
「ネコトリグサの花、干したマンドラゴラの根、女王蜂の脳味噌、山羊のミルク、真夜中に摘んだ水草……以上の材料で作れる魔法薬を答えろ」
「ちょ、そんなことまだ教わってないですよね!?」
「まだ基礎中の基礎の薬草についてしか……他の材料との組み合わせなんて」
「お前達に喋る許可をだした覚えはないが? 話を全て聞いていたのなら分かるはずだ」
エースとデュースが庇ってくれようとするが、クルーウェル先生に睨まれて口を噤んだ。
たしか、マンドラゴラについて説明している時に、1年生でも比較的簡単に作れる「浮揚薬」の材料だったはず。
『浮揚薬………だと、思います……』
間近で見るクルーウェル先生の顔が怖くて段々声が小さくなっていく。
「マンドラゴラの根が用いられる危険な薬のひとつは?」
『絶対服従薬……です』
「グッボーイ! しっかり話を聞いていたようだな、よろしい」
私の回答に満足した先生は笑みを浮かべると、何事も無かったように再び授業を再開した。
「お前すげーな」
「一回聞いただけで覚えられるのか」
『勉強は得意じゃないよ。 興味があるからかな』
聞きなれない単語が多くて多少頭は混乱しているが苦ではない。 むしろ聞けば聞くほど楽しくなってきた。
これなら100種類でも200種類でも覚えられそう!
クルーウェル先生の怖い顔を間近で見たグリムは、その後ふざけることも無く真面目に授業を受けていた。 と、思う。
「ステイ! 今日はここまで!」
『ん~』
凝った肩を解すためにグーッと伸びをする。
「終わった~。 次は……魔法史だな」
"魔法史"
これまた面白そうな授業名。
教室は昨日お喋りした肖像画が飾られている部屋だった。
「おや? 君は昨日の子だね? 捜し人は無事見つけられたかい?」
「はい、お陰様で。 ありがとうございました」
席に着いて授業が始まるのを待っている間、魔法史の先生はどんな人なんだろうと想像を膨らませる。 きっと派手な人に違いない。
しかし、現れた教師に拍子抜けしてしまった。
多くの人が思い描くであろう教師像、初老の男性だった。 ただ、私の世界の先生と違うところは猫を抱えているところ。
「私は魔法史の授業を担当するトレインだ。 こちらは使い魔のルチウス」
ペットじゃなくて使い魔なんだ! なんかかっこいい!
