第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
「授業を始める。 まず基本的な知識、薬草と毒草100種類の名前と見分け方をお前らの小さい脳味噌にたたき込む」
100種類!? 配られた教科書を開く手がスローモーションの如く重くなった。
「菌糸類はまた別だ。 散歩中に知識なく口にいれて中毒にならないよういずれ覚えてもらう。 犬はすぐ拾い食いをするからな」
あれ、犬扱いされてる? 違和感はこれか。
流石にその辺に生えてるモノを食べる人なんていないと思うけど……グリムは別として。
「テストで赤点をとる生徒が一匹も出ないように厳しく躾けていくからそのつもりで」
まるで調教師。
「なるほど。 ところでキンシルイってなんだ?」
「げー。 オレ、暗記系苦手なんだよなー」
「草なんか、美味いか不味いかだけわかればいいんだゾ」
クルーウェル先生に関してはノーコメントですか。
ここの世界ではあんな高級ファッションモデルみたいな人が一般的な教師なのか。
『でもちょっと楽しみだね』
こういう授業は彼等にとっては特別でもなんでもないだろうど、私にとってはすごくわくわくする。
100種類も憶えなきゃいけないのは少し頭が痛くなるけど。
「教科書の7ページを開け。 まずは1年で頻繁に使う薬草の説明から始める。 抜き打ちテストもあるからしっかりノートをとるように」
クルーウェル先生が書いた黒板の文字をノートに写したり、注意点を教科書に書き込んでいく。
グリムは教科書と一緒に配られたノートにいそいそと何かを書いている。
「オイ、ウテナ。 これ見ろよ、オレ様の画力を」
『何書いたの?』
ノートを覗くとヘッタクソな似顔絵が描かれていた。 何やってるのこの子。
『これ、まさかクルーウェル先生?』
「そうだゾ! 似てるだ―――あいてっ」
『真面目に勉強なさい』
ノートを取り上げてペシッと軽く叩く。
再び授業に集中しようと視線を前に向けると、ばっちりとクルーウェル先生と目が合った。
「俺の授業よりよっぽど重要なことが書いてあるのか? そのノートには」
『い、いえっ』
眉を寄せたクルーウェル先生が、カツカツと踵を鳴らして近づいてくる。
『っ!?』
鞭に見える指し棒がヒュッ目の前を横切り教科書に置かれ、先生が口を開く。
「俺の目を見て答えろ」