第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
「あ! こんなことやってる場合じゃなかった。 寮長に話があるんですけどまだ寮内にいます?」
「ん? まだいる時間だと思うけど……お詫びのタルトは持って来た?」
「お詫びのタルト?」
訳が分からず互いに顔を見合わせる。
お詫びの品が必要だった感じ?
「いや、朝一で来たから手ぶらですけど……」
「それじゃあハートの女王の法律・第53条『盗んだものは返さなければならない』に反してるから、寮には入れられないな」
満面の笑みで衝撃の事実を聞かされる。
「見逃したらオレも首をはねられちゃう。 悪いけど、リドルくんが気付く前に出てってもらうね」
「な、なんかケイト先輩が何重にも見える」
「双子? いや、三つ子……もっといる!」
手ぶらがダメなら最初に言って欲しかった……
ケイト先輩"達"に摘まみ出された私たちは仕方なく授業へ向かうことに。
「そういえばウテナ達のクラスどこ?」
『1年A組って言われた』
「なんだ、同じクラスじゃないか。 1限目は魔法薬学だな」
『同じクラスなんだ!』
「ウヒョー! なんか楽しそうなんだゾ!」
友達と同じクラスで良かった。
そうでなければ魔法薬学の授業が行われる実験室に永遠に辿り着けなかっただろう……持つべきものは友。
『映画のセットみたい』
壁を覆う棚には液体やら乾燥植物が入った瓶が並んでいる。
階段状に並んでいる二人掛けの机にはそれぞれ鍋と、かき混ぜるための大きな木のスプーンが2つ用意されていた。
空いている席にグリムと座り、エース達は後ろの席に着いた。
『おぉ~これで魔法薬を作るんだね』
まだ何も入ってない鍋に木のスプーンを突っ込んで混ぜる動作をする。
「おい、アホ丸出しな事すんなって」
「別にいいじゃないか、エース。 初めての授業が楽しみで仕方ないんだろ」
『……』
私はそっとスプーンを置いた。
「お前たちが今日から俺の担任クラスに入った新顔か」
教室の騒音がシン…と静まり返る。
現れたのは全身モノトーンのかっこいい先生。 この世界の先生って派手。
「珍しい毛色をしているな。 悪くない。 日頃から手入れを欠かさないように」
なんだろう、この違和感。
「俺の名前はデイヴィス・クルーウェル。 気軽にクルーウェル様と呼んでいいぞ」