第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
『わぁ! おとぎ話の中に出てくるお城みたい!』
寮へ続く道沿いには真紅の薔薇を着飾った植木が立ち並び、広場には朝日の光を反射して輝いている噴水。
「ほわぁ~! めっちゃ豪華だ! オレ様たちの寮と全然違うんだゾ!」
『そうだね……』
いや、比較しちゃダメでしょ。 うちはまだ発展途上なんだから!
「寮長探すついでにちょっと見て回るか? オレまだ心の準備できてねーし」
「そうだな……薔薇の迷路なんてどうだ?」
『薔薇の迷路!? 見たい見たい!』
案内された迷路は想像以上だった。
2メートルぐらいの高さで綺麗に刈り揃えられた植木に、随所に植えられている薔薇。
この迷路の中をさ迷うのはさぞ楽しいだろうな。
迷路の周りを観光していると気になる人を見つけた。
『あの人何やってるのかな?』
視線の先には薔薇に向かって独り言をブツブツ呟いている青年がひとり。
「おっと危ない。 塗り残しは首が飛ぶぞ」
その青年は白い薔薇を赤く塗っていた。
「君たち何か用?」
不思議そうに眺めていた私たちに青年が気付いた。
何をしているのか尋ねると、文字通り薔薇を赤く塗っていると。
どうやらここでは普通のことらしく、私たちの反応を面白そうに見ている。
「って、よく見たら君たち昨日10億マドルのシャンデリア壊して退学騒ぎ起こした新入生じゃん」
「オレたち卒業までシャンデリアのことずっと言われそうだな……」
「しかも君はその日の晩に寮長のタルトを盗んで罪の上塗りをした子だ!」
「学校中で話題になっている新入生と朝一で会えるなんてラッキー♪」と喜ぶ彼は、私達に身を寄せて写真を撮る。
口をはさむ隙もなく彼のマシンガントークは続く。
「あ、これマジカメ上げていい? タグ付けしたいから名前教えてよ」
「デュース・スペードです」
「エース」
「グリムと、その子分・ウテナなんだゾ!」
いや、いつから私は子分になったんだ。
「ほい、アップ完了っと♪ あ、オレはデュースちゃんたちの先輩で3年のケイト・ダイヤモンドくんでーす! ケイトくんって呼んでね。 けーくん♡でもいいよ」
人懐っこい笑みを浮かべるケイト先輩。
なんか派手な人だな~と思いながら見ていると、視線に気づいたケイト先輩が近付いてくる。
「あ、君は噂のオンボロ寮の監督生になったコだよね」
