第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
『はい、枕とブランケット』
「ありがとう……」
エースは私と視線を合わせることなく受け取った。
男だと思ってた人が実は女で戸惑っているのかもしれない。
何事もなかったように振舞い、気まずい雰囲気を作らないように努めているが、エースは他にも何かを気にしている様子。
『女でも友達……だよね?』
「お前良い奴だし、女だからって理由で距離は置かねーけど……ここ男子校だぜ? 大丈夫なのか、色んな意味で」
『え、ここ男子校なの?』
言われて見れば男の子しか見てない気がするけど、
『女の子いたよ』
「いや、いないって」
エペルは女の子でしょ。 今度見かけたらエースに教えるか。
「学園長はお前が女ってこと知ってんの?」
『もちろん知ってるでしょ』
「どうだかなぁ……女って知ってたら入学は許可されてなかったんじゃないの?」
『それって雑用係に逆戻り?』
「かもな」
せっかくファンタジー青春ライフを送れるようになったのに……あの人なら入学を取り消しかねない。
『学園長には秘密にしておいてくれないかな、お願い!』
今までの恰好で男だと思われているのなら、このまま男として過ごせばいい。
いくら男っぽい恰好でも女性と認識されていないのはショックだが今回ばかりは助かった。
女であること隠し通すのはこの先面倒臭いことになりそうだけど、「私、優しいので」の言葉を信じて正直に話した結果、退学処分にされる可能性がある以上打ち明けられない。
何か学園長に貸しを作ってから自分の性別を訂正させていただくことにしよう。
"貸し"さえあれば易々と私を追い出せないはず。
学園長に言うまで性別のことは秘密にしておいて欲しいとお願いすると、エースは一瞬きょとんとするが直ぐにあの意地悪な笑みを浮かべて頷いた。
「いいぜ。 でもタダじゃやだ」
『今お金ないです……』
今はスッカラカン……って友達なら無条件で協力してよ。
「金で払えなんて言ってねーよ。 ま、考えとくわ」
代わりに面倒な頼み事されなければいいけど…‥