第3章 楽しい学園生活の始まり始まり
『それで? こんな夜中にどうしてここに?』
混乱するエースを談話室へ案内しここへ来た理由を尋ねる。
もちろん私はもう服を着ている。
「今日からオレ、ここの寮生になる! も~絶対ハーツラビュルにはもどんね!」
「にゃに!?」
『何があったの? その首輪……』
エースの首には、グリムが入学式で付けられたのと同じ首輪がはめられている。
「その首輪って、オレ様が入学式であの赤毛の上級生につけられたヤツだゾ。 なんでそんなの付けられたんだ?」
何か悪いことでもしたのかな。 グリムみたいに暴れたとか。
「タルト食った」
『え? それだけで?』
「そーだよ、それだけ!」
エースがムッとして答える。
「小腹が空いたから寮のキッチンに行ったら、冷蔵庫にタルトが冷やしてあったんだよ」
寮の冷蔵庫にそんな素敵な食べ物があったら食べたくなるよね。 羨ましい。
ここにある冷蔵庫の中には……何が入ってるかまだ確認してないけど、見るのは止めておこう。
「ホール3つ分も! だから……」
一切れ食べてもバレないと思ったそう。
しかし、盗み食いを寮長に見つかってしまい、ハートの女王の法律に従って裁かれたと。
「どっちもどっちなんだゾ」
「たかがタルトを盗み食いしただけで魔法封じされるのはおかしくね!? 魔法士にとっては手枷と足枷つけられるみたいなもんじゃん」
エースの不満は留まるところを知らない。
「3ホールも一人で食べきれないくせに」だの「食いしん坊」だの「心が狭いにもほどがある」だの……でもやっぱり、
『それだけで首をはねるのはやり過ぎだと思うけど、許可無く食べたエースも良くないと思う』
そこでグリムがハッとした。
「3ホールもあったなら、パーティ用かもしれないんだゾ。 誰かの誕生日とか……オレ様名推理すぎるんだゾ」
ああ、たしかに。
3ホールもあの赤毛の青年が食べきれるとは思えない。
パーティ用に作っておいたものだったなら怒られて当然だ。
『そうだったら怒られても仕方ないね。 それにその態度、謝ってすらないでしょ』
「う……オレ、ウテナなら絶対に寮長が横暴だって言ってくれると思ってたんだけどぉ?」
『間違いを指摘するのも友達でしょ?』