第2章 夢ではなかった
学園長に言い渡された仕事は、このカメラでグリムや生徒たちの撮影をして学園生活の記録を残すことだった。
待てよ……
このカメラに撮影された人物が動いたり飛び出したりするのは親密度が高い場合のみ。
遠回しに学生たちと仲良くなれって圧をかけられてる?
「らんららん♪ オレ様がかっこいいところじゃんじゃん撮るんだゾ~♪」
「……特にああいうお調子者が悪さをした時には必ず『メモリー』を残しておくこと。 私への報告書代わりにうってつけでしょう?」
『なんか私、学園長の手先にされていませんか? いくら衣食住のためとはいえ過労死してしまいます』
「なにを言ってるんですか。 貴方には監督生としてしっかり周囲に目を光らせ記録をとるように」
都合がいいってこういうことか!
私が監督するのはグリムだけのはずなのになぁ……
学園長の話を聞く限り、ここの生徒は色々と問題がありそうだしあまり気が進まない。
けれど、
「オレ様は大魔法士になるんだゾ~♪」
隣で貰ったばかりの魔法の石を嬉しそうに眺めているグリム。
面倒に巻き込まれるのはゴメンだが、せっかく入学できたのに取り消しにするなんて言われたら困る。
「魔法士でなくても使える希少な魔法道具を気前よく渡すなんて……私の優しさ、天井知らずじゃありません?」
『そうですね。天井突き破って雨漏りしてますよ』
「ゴホンッ…さて、今日はもう遅い。 詳しい話は明日にしましょう」
学園長室から出ると肩の力が抜けていくのを感じる。
それはエースとデュースも同じで緊張が解けてホッとしている。
私たち3人はもうクタクタなのに、グリムだけはご機嫌で小躍りしている。
「らんららん♪ 明日からオレ様もナイトレイブンカレッジの生徒なんだゾ!」
『良かったねグリム』
「オマエたちなんかぶっちぎって学年首席になってやるんだゾ~!」
「ウテナと二人で一人の半人前のクセしてよく言うぜ……まー良かったんじゃないの?」
「明日からは同級生だな。 ウテナ、グリム」
『明日から、改めてよろしくね。 2人とも』
シャンデリア事件で仲良くなれた(と思う)2人。
見知らぬ世界で心細かったけどこうして知り合いができたのは素直に嬉しい。
気恥ずかしいのかエースとデュースは互いに小言を言い合っているけれど、もうそこに悪意は感じられない。
