第2章 夢ではなかった
「お前たちの寮に寮生は2人だけ……つまり、学園長にグリムの監督を任されたウテナが必然的に監督生になるってことだな」
『寮って……あのオンボロ寮か』
「前代未聞なんじゃねーの? 魔法が使えない監督生なんてさ。 いいね、クールじゃん。 魔法が使えない監督生!」
『こうして新たな伝説が生まれるんですね』
「オレ様は伝説になるんだゾー!」
冗談に対してエースがからかってくるかと思ったのに、本人は友人みたく笑っただけでちょっと拍子抜けした。
「あははっ。 頑張れよ、監督生どの!」
デュースの頭と強くぶつけ過ぎたか……?
「なるほど、監督生ですか……ちょうど頼みたい仕事もありますし、肩書きがあるのは都合がい……いえ、素晴らしい!」
学園長は机の引き出しからごそごそと何かを取り出すとそれを私に差し出した。
『カメラ?』
良く見慣れているカメラではなく、女子が好きそうなレトロカメラ。 好き。
「これは通称“ゴーストカメラ”と呼ばれるものです」
『ゴーストカメラ?』
霊を撮影できる特殊なカメラかな?
一見ただのカメラにしか見えない。
カメラを観察しているとエースが覗き込んであっと声を上げた。
「そればーちゃんに聞いたことあるかも。 すっげー昔の魔法道具っすよね?」
"すっげー昔の"という言葉に学園長が少しムッとしながら話し出す。
「確かに、君のひいお祖母様か、ひいひいお祖母様が子どもの頃に発明されたのかもしれません―――」
このゴーストカメラは被写体の姿だけではなく魂の一部、『記憶の断片(メモリー)』を写し取ることができる代物だそう。
さらに、撮影者と被写体の魂の結びつきが深くなると、写真に写された『メモリー』が飛び出してくるという。 ホラー。
「撮影者が被写体と親しくなることにより写真が動画のように動いたり、実体を伴って抜け出したりするようになるんです! 面白いでしょう?」
『まるで心霊写真じゃないですか!』
「だから『ゴーストカメラ』と呼ばれたそうです」
学園長があまりに面白そうに話すから、こっちの世界ではこんな不気味なものが当たり前かと思っていたけどデュースの反応から違うと分かってなんかホッとした。