第2章 夢ではなかった
「ただいま戻りました! 無事、魔法石を手に入れました」
「エッ!? 本当に魔法石を探しにドワーフ鉱山へ行ったんですか?」
デュースが手に入れた魔法石を差し出すと学園長が驚きの声を上げた。
「「『へ?』」」
「どういうことですか?」
まさかこの人……
「いやぁ、まさか本当にいくなんて……しかも魔法石を持って帰ってくるなんて思っていませんでした」
最初から私たちが魔法石なんて探しに行かないだろうと思って、「粛々と退学手続きを進めていました」なんて悪びれる様子もなく言ってのけた。
『ひどい!』
「ひでー野郎なんだゾ! オレ様たちがとんでもねーバケモノと戦ってる時に!」
「バケモノ?」
グリムの"バケモノ"という言葉に学園長が反応する。
「モンスターが出てきたんスよ。 ほんと、めっちゃエグいわ強いわで大変だったんすけど!? ウテナも危うく死にかけたんですよ!」
只ならぬ出来事に学園長が真剣な面持ちで説明を求めた。
「詳しく話を聞かせて貰えますか?」
うまく説明できないので、怪物に握られた時に見えた映像のことは伏せて事の顛末を話した後、どういう訳か学園長が感嘆の声を上げた……というか泣き出した。 怖い。
『学園長、大丈夫ですか?』
突然泣き出してぎょっとしたが、すぐさま駆け寄ってとりあえず背中を擦ってあげる。
「なんだコイツ! いい大人が突然泣き出したんだゾ!?」
「この私が学園長を務めて早ン十年……ナイトレイブンカレッジ生同士が手と手を取り合って敵に立ち向かい打ち勝つ日がくるなんて!」
怪物を倒したことよりも、生徒同士が協力したことの方が衝撃なんだ……
エースとデュースは「手と手を取り合ってなんかいない!」と全力で否定しているが学園長は構わず話し続ける。
「今回の件で確信しました。 ウテナくん、貴方には間違いなく猛獣使い的才能がある!」
『はい?』
背中を擦っていた私の手を取りグッと顔を近づけてくる。
「ナイトレイブンカレッジの生徒は選ばれし優秀な魔法士の卵です。 しかし、優秀がゆえにプライドが高く我も強い。 他者と協力しようという考えを微塵も持たない個人主義かつ自己中心的な者が多い」
猛獣ってグリムのことを言ってるのかと思ったけど、ここの生徒たちのことか。 だから学園長は鞭なんか持ってるんだ。 納得。
