第2章 夢ではなかった
「やい、バケモノ! こ、コココッチなんだゾ!」
『こっちだぞー! おーい!!』
グリムと怪物を誘き寄せるために大声で叫び続ける。
唸り声を上げながら一歩、また一歩洞窟から離れて襲い掛かってきた。
『おわっ』
「びゃっ」
怪物が振り回す拳を避けつつ洞窟から少しでも遠くへ引き離すために周りを走り続ける。
「だいぶ洞窟から話したんだゾ!」
『今だー!』
合図で木の陰に隠れていたエースとデュースが怪物の前に姿を現す。
「いくぜ、特大突風!」
「アーンド・グリム様ファイアースペシャル! ふな"~~!」
先程はエースの魔法でも、グリムの魔法でも怪物はビクともしなかったが、無効というわけではなく威力が弱いだけだと思った。
不意をつけばバランスを崩す程度のことは出来るが十分な時間は稼げない。
ならば、グリムの火をエースの風で煽って威力を上げてやれば魔法石を取る時間は稼げるはず。
そして、思った通りに怪物は怯んだ。
「どーよ! グリムのショボい炎もオレが風で煽ってやればバーナー並みの火力だぜっ!」
「ショボくねーっ! ほっんとにオマエ一言多くてムカつくんだゾ!」
協調性さえあれば私がわざわざ言わなくても思いつくような作戦なんだけどな……
炎の竜巻が効いて身動きが取れずにいる怪物に、最後にデュースが大釜をお見舞いする。
「いでよ、大釜!」
「やった! 上手くいったんだゾ!」
大釜は見事命中して怪物を封じ込めた。
「今のうちに魔法石を取りに行くぞ!」
無事に魔法石をゲット出来てほっとしたのも束の間。
魔法石を取られたのを察した怪物が大釜を押しのけて下から這いずり出ようとしている。
もっとなにか重たいものを乗せろとグリムが急かすと、デュースが焦りながらもそれに応える。
「あ、い、いでよ大釜! あとは、えーとえーっと、大釜! それから……大釜!!」
うん。 大釜を出すのが得意なのは良く分かったよ。
「お前、大釜以外に召喚レパートリーないわけ!?」
「うるせえな! テンパッてんだよ俺だって!」
「魔法石はゲットした。 ずらかるんだゾ!」
『うん!』
もう少しで帰れる。 あともう少しだ。