第2章 夢ではなかった
ケンカなんかしている場合じゃないのにこの野郎2人は……
『2人ともいい加減しなさい!!』
「「!?」」
驚いて振り返った2人の後頭部を掴んで思いきり手前に引き寄せた。
「あだ!」
「うっ!」
ゴンッと鈍い音と呻き声。 力を加減していないので相当痛いはず。
「てんめっ」
「なにをっ」
『しー』
文句を言おうと頭を上げようとした2人を胸元に引き寄せて押さえつける。
『そんなだから2人とも歯が立たないんだよ。 大丈夫、きっと上手くいく。 そのためにはケンカしてる場合じゃない。 分かったね?』
「わ、分かったから……この体勢そろそろキツいって」
「ぐっ……すまん」
身長的にキツい体勢だったみたいで若干足がプルプル震えていた。 申し訳ない。
『作戦を立てて、みんなで協力すればきっと……』
こういうファンタジーな世界は力を合わせれば不思議な力が働いて結果的に上手くいく……はず!
「力を合わせるって……ハッ、何ソレ寒っ。 よくそんなダッセェこと真顔で言えんね」
「同感だ。 こいつと協力なんか出来るわけない」
『……』
泣いてもいいですか。
ここは普通「そうだな! 力を合わせよう!」とか「信じればきっと上手くいく!」とかじゃないの?
魔法が存在するだけでこの世界は現実世界とそう変わらないのか?
「でも……入学初日で退学ってもっとダセー気がするんだゾ』
真面目な声のトーンでそう言ったグリムにみんな驚きが隠せない。
グリムの言う通りで2人とも黙ってしまった。
『たしかに初日で退学なんてクールじゃないよね!』
「はぁ……分かったよ。 やればいいんでしょ、やれば! で、なにか作戦はある?」
『うん! 実はね――』
たった今思い浮かんだ作戦を話す。
「やってみる価値はあるな」
「よし! そうと決まれば後は全力を尽くすだけだな」
作戦実行のため、再び鉱山の入り口へやって来た。
『やるよ、グリム』
グリムが不安そうに見上げてくる。
「ウテナ~ほんとにその作戦上手くいくのかよぉ……こわ……いや、不安なんだゾ」
『大丈夫だって! なんとかなる!』
親指をグッと立ててニッと笑う。 少し安心できたグリムは力強く頷いた。