第2章 夢ではなかった
「な、なぁ……デュース。 オマエなんかキャラ変わってる気がするんだゾ? なぁウテナ」
『う、うん』
グリムが戸惑いながら彼に声をかけると、ハッとして直ぐに元のデュースに戻った。
「……悪い。 少し取り乱した」
キャラが変わってしまう程デュースが必死なのは、きっとお母さんを悲しませたくないからなんだよね。
自分の子どもが退学処分になったなんて聞いたら親は悲しむ。
親想いなんて素敵。 これは何が何でも魔法石を手に入れなければ。
『魔法石の場所は分かってるんだから、あの怪物の気を逸らすことができれば……』
顎に手を当てて何か良い案はないか考える。
「オマエら、バーンとド派手な魔法とか使えねーのか?」
そうか、魔法で目くらましみたいなことをすれば怪物の横をすり抜けて魔法石をとれるかもしれない。
「大がかりな魔法や複雑な魔法の使用には訓練が要る」
「だから魔法学校があるんだけどね。 パッと思い浮かべた通りに魔法を使うにはかなり訓練が必要ってワケ。 ぶっちゃけ、テンパッてるとミスりやすい。 得意な魔法なら感覚で使えるんだけどねー」
『魔法って結構複雑なんだね……ノリでほいほい使えるのかと思ってた―――ハッ!』
そこであることに気付いてしまった。
魔法は訓練しなければ自分の思い通りに使えない……言い方を変えれば、訓練さえすれば色んな魔法が使える。
にも拘わらずグリムは火を吹くことしかできない……
『ぶふッ』
「オイ! 急にオレ様の顔を見てなに笑ってるんだ!? 失礼なヤツ!」
『グリムが火ばっかり吹く理由が分かったから……ご、ごめんっ』
「オレ様をバカにしてるのか!」
『痛い痛い!』
足にガシガシと爪を立てるの止めてよ痛いから!
「その毛玉は単純だから火しか吹けねーよな」
「ふなぁ"-!」
「とにかく、僕はなんとかしてあいつを倒して魔法石を持ち帰る」
あ、そうだ。 グリムをからかっている場合ではない。
良い案も浮かんでいないのに、鉱山へ再び向かおうとするデュースにエースが呆れたように言い放つ。
「お前さー、シャンデリアの時といい実は相当バカでしょ。 さっき歯が立たなかったくせに「なんとか」って何? 何度やったって同じだろ」
「何だと!? お前こそ!」
「また始まったんだゾ」
ケンカせずにはいられない病気なの?
