第2章 夢ではなかった
帰るなら2人も連れていく。 けど、
「魔法石を持ち帰れなければ退学……僕は行く!」
デュースはまだ諦めていない。
「冗談でしょ!?」
『1人で行くなんて危険すぎるよ!』
「俺は絶対に退学させられるわけにはいかないんだ!」
魔法石を探したいのは山々だが、あの怪物をどうにかできるとは思えない。 死んでしまったら元も子もない。
帰ろう! 帰らない! と押し問答をしていると、騒ぎを聞き付けた怪物に見つかってしまった。
「カエレ! カエレ!! カエレ!!!!」
暴れて振り回される腕にデュースが吹き飛ばされた。
エースがすかさず魔法で応戦するが、怪物は一瞬怯んだものの振り上げられた拳に吹き飛ばされてしまった。
「ふぎゃぁ~!! コッチに来るな~!!」
グリムが一心不乱に炎を吹き付けるが怪物は唸り声を上げるだけ。
「ぜ、全然効かねぇんだゾ~!」
『今何か光った……?』
グリムの吹いた炎に反射して、怪物の背後で何かが光るのが見えた。
「あいつの後ろ! 坑道の奥で何か光って……」
『あの光は、魔法石……!?』
私たちが魔法石に気付いた途端、怪物はより一層激しく暴れ始めた。
「オイウテナ! ひひひひとまず逃げるんだゾ! このままじゃ全員やられちまう!」
「一旦逃げよう!」
一心不乱に怪物の振りかざす拳を避けながら走り続け、気付いたらあの小屋の前まで来ていた。
「いってぇ……何だったんだよさっきの! あんなの居るなんて聞いてねーって!」
「ただのゴーストではなさそうだったな……」
「もう諦めて帰ろーよ。 あんなんと戦うくらいなら退学でいいじゃん、もう」
「なっ!? ざっけんな! 退学になるぐらいなら死んだほうがマシだ!」
あれ、デュースの雰囲気が変わった……?
「魔法石が目の前にあるのに、諦めて帰れるかよ!」
「はっ。 オレより魔法ヘタクソなくせに何言ってんだか。 行くなら勝手に1人で行けよ。 オレはやーめた」
エースが背を向け歩き出した時、
「あぁ、そうかよ! なら腰抜け野郎はそこでガタガタ震えてろ!」
『!?!?』
ドスを利かせた声でエースを睨みつける彼は先程とは別人だった。 そう、まるでヤンキー……
キレたデュースに対してエースは怯むことなく煽る。
「はぁ~? 腰抜け? 誰に向かって言ってんの?」