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王子と悪徒の異聞奇譚

第2章 夢ではなかった


辺りを見回すとそこは鬱蒼と木々が生い茂る森の中だった。
既に日が暮れて暗い。 目を凝らしてみると、橋が架かった小川の向こうに小屋が見える。
木々の間を吹き抜ける風の音が唸り声に聞こえてとても不気味な場所だ。

「ここがドワーフ鉱山……一昔前は魔法石の採掘で栄えたらしいが……」

「うぅ……何か出そうなんだゾ……」

涙目になって足にしがみつくグリムを抱き上げる。
夜の寒さのせいか、或いは恐怖のせいなのか分からないが足がガクガクする。

『すごく不気味な場所……はやく魔法石探して帰りたいっ』

「あ、奥の方に家がある。 話聞きにいってみよーぜ」

「そうだな」

エースとデュースはこの不気味な場所を怖いと思わないのかスタスタと小屋へ向かう。 この2人強い。

コンコン

「こんばんは……って、空き家か。 荒れ放題だ」

デュースがドアとノックすると、耳障りな音をたてて扉がゆっくりと開いた。
中を覗くと、私とグリムが住んでいるオンボロ寮と同じぐらい荒れている。

「なんか机とか椅子とか全部小さくねえ? 子ども用かな?」

エースに言われて見てみると、確かに小さい。 しかもその数は7人分ある。
一通り家の中を見たが魔法石らしきものは無かった。

「ここでこうしててもしゃーない。 魔法石があるとすれば炭鉱の中だよね。 とりあえず行ってみよーぜ」

道標を頼りに辿り着いたドワーフ鉱山はこれまた不気味な雰囲気を醸し出していた。

「こ、この真っ暗な中に入るのか!?」

『流石に入ら……ナイヨネ?』

「お前らビビッてんのかよ。 だっせー」

「なぬっ!? ビ、ビビッてなんかねーんだゾ! オレ様が隊長だ! オマエらついてくるんだゾ!」

グリムは私の腕から飛び降りて中へ入って行く。
単純というかなんというか……

「!? 待て! 何か……いる!」

デュースの制止の声で、皆奥の暗闇へ目を凝らしてみる。

「びゃっ!?」

暗闇からスゥ……と現れたのは嫌という程見慣れた白いヤツら。
この世界ゴースト居過ぎじゃない?

「ヒーッヒッヒ! 10年ぶりのお客様だあ!」

「ゆっくりして行きなよ。 永遠にね!」

しかも殺したが……仲間にしたがり過ぎ。 物騒。

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