第2章 夢ではなかった
「それを弁償できるとでも?」
10億……とても一般人が払える額じゃない。
「で、でもさ、先生の魔法でパパッと直せちゃったりとか……」
「魔法は万能ではありません。 しかも、魔法道具の心臓とも呼べる魔法石が割れてしまった」
魔法でもどうにもならないのか。
入学してからまだ一日しか経っていないのに退学だなんて……さすがに可哀想。
特にデュースはこちらが面倒に巻き込んだみたいなものだし。
「もう二度とこのシャンデリアに光が灯ることはないでしょう」
「そんな……」
「ちくしょう……何やってんだ俺は……母さんに何て言えば……」
デュース、お母さんの心配してるの?
絶望に打ちひしがれていると、ふと何かを思い出したかのように学園長が呟く。
「……そうだ。1つだけ、シャンデリアを直す方法があるかもしれません」
その言葉にみんな期待のこもった眼差しで話の続きを待つ。
「このシャンデリアに使われた魔法石はドワーフ鉱山で採掘されたもの。 同じ性質を持つ魔法石が手に入れば修理も可能かもしれません」
「僕、魔法石を取りに行きます! 行かせてください!」
『私も行きます! 責任は私達にもあるし』
「ありがとう!」
「ですが、鉱山に魔法石が残っている確証はありません」
その鉱山は既に閉山されており、掘り尽くされて魔法石が残っている可能が極めて低いそう。
そんなことを聞いてもデュースの意志は変わらない。
「退学を撤回してもらえるなら、何でもします!」
『どうかお願いします!』
頭を下げる。
学園長は一瞬考えを巡らせた後、静かに言った。
「……いいでしょう。 一晩だけ待ってさしあげます。 明日の朝までに魔法石を持って帰ってこられなければ君たちは退学です」
「はい……! ありがとうございます!」
『ありがとうございます! 学園長!』
「はーぁ。しゃーねえ。 んじゃパパッと行って魔法石を持って帰ってきますか」
「ドワーフ鉱山までは鏡の扉を利用すればすぐに到着できるでしょう」
「はい!」
『行ってきます! グリム行くよ!』
「ふなぁ……」
まだ足元がふらふらしているグリムを抱えてエース達と大食堂を後にした。