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王子と悪徒の異聞奇譚

第2章 夢ではなかった


「はいはい。 わかりましたよ~っと。 んじゃパパッと始めますか」

『言い忘れてたけど、逃げようとした罰として80枚はエースが拭いてね』

「はあっ!? それはおかしいって! あんな火を吹いたのは毛玉なんだから……あっ! 毛玉がいない!」

『え!?』

周りを見渡してみるもグリムの姿が見当たらない。

まさか……

「あんにゃろ~オレを身代わりにしたな!?」

『もう嫌だ! どうして皆素直に窓を拭いてくれないの!』

膝を突いて床を力一杯に殴る。
やっとエースを見つけたと思ったら今度はグリムが逃げた。
ちゃんと窓拭きしなきゃさらなる罰を与えられるはず。 そのうち学園長の”愛の鞭”でぶたれるかもしれない。
そんな未来が訪れないように頑張っているというのにコイツらは……!!

『わ、悪かったって……おい! えーっと、ジュース?』

「なっ、ジュースじゃない。 デュースだ! でぅっ!」

「お前にも責任あるんだからあの毛玉捕まえるの手伝えよ!」

「なんで僕が!?」

「魔法が使えないお前は戦力外だから先に大食堂で待ってろ。 行くぞジュース!」

一言余計だよ!

でも、魔法が使えない私が行っても仕方ないから、グリムの捕獲はエース達に任せて大人しく大食堂へ向かう。

グリムがもう少し言うことを聞いてくれればいいんだけどなぁ……
猫を飼ったことがないので躾方が分からないけど……犬と同じ要領でいいのかな。 そもそもあの子は猫なのか?
大食堂で掃除道具の準備をしながら待っていると、エース達の声が聞こえてきた。

「くそー! ちょろちょろしやがって!」

グリムをまだ捕まえられていないようだが、うまく大食堂まで追い込んできた。

『こら!!』

「げっ! ウテナ!」

『あっ、待ちなさい!』

グリムを捕まえようと身を屈めると、私の肩に飛び乗り、さらに走ってきたエースの顔面を踏み台にしてシャンデリアへと飛び乗った。 羨ましいジャンプ力。

「こんの毛玉ぁああ"ーー!!」

「っく、シャンデリアに登るとは卑怯だぞ!」

『今すぐ降りてきなさい!』

「へっへっへ! 捕まえられるもんなら捕まえてみろ~だゾ!」

もう、どんだけ窓掃除したくないんだよ……

「はっ、そうだ!」

どうやってグリムを捕まえようか考えていると、デュースが名案が浮かんだと言いたげに構えた。

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