第2章 夢ではなかった
「こらー!!! 何の騒ぎです!」
『来たっ!』
これだけ大騒ぎしていれば当然やってくる学園長。
野次馬をかき分けて現れた学園長が相当ご立腹なのは仮面越しでも分かる。
学園長を見るなり仲良く逃げようと回れ右をしたグリムとエースだったが、ビシバシとあっという間に捕えられた。
「いでーっ!」
「ふぎゃーっ!」
正確には鞭で地面に叩きつけられていた。
「愛の鞭です! この私から逃げようなんて100年早いんですよ!」
地に伏せた状態の2人を容赦なく叱りつける学園長。
「よほど退学にさせられたいと見えます」
「ちょっ! それは勘弁!」
「ウテナくんも、これではグリムくんを監督しているとは言えませんよ」
『申し訳ありません』
私怒られるようなことしてないのに……いや、煽ったわ。
「3人には罰として窓拭き掃除100枚の刑を命じます!」
容赦ない罰にグリムが不服を唱える。
「もとはといえば、ソイツがオレ様たちを馬鹿にしたからいけないんだゾ!」
「ええっ!? オレもぉ!?」
「当たり前です! 放課後、大食堂に集合。 いいですね」
『…はい』
「へぇ~い」
「昨日から散々なんだゾ~」
「さあさあ、みなさん授業に遅れますよ」
学園長に促されて野次馬たちは散っていき、私とグリムだけになった。
『はいちりとり』
「はぁ~あ」
愛の鞭が応えたのか、グリムは素直にちりとりを受け取ってくれた。
ゴミを拾い、雑草を抜き、落ち葉を掃き、石像を拭く。
グリムが途中でもうやりたくないと駄々をこねたりもしたが、学食のご馳走で機嫌がなおり、無事今日の掃除を終えられた。
……衣食住の分は。
これから騒ぎを起こした罰の”窓ふき掃除100枚の刑”がある。
「1日中掃除してもうクタクタなんだゾ~……それなのに、これから窓ふき100枚だなんて……」
『疲れたね~。 これに懲りたらもう騒ぎを起こさないでよ。 連帯責任になるんだから』
「オレ様は悪くないんだゾ」
これはまた騒ぎを起こすだろうな。
「それにしてもエースってヤツ、遅いんだゾ。 オレ様を待たせるとはいい度胸だ!」
確かに遅い。 授業はもう終わっているはず。
「『……』」
10分後
「『……』」
20分後
「『……』」
30分後
「……いくらなんでも遅すぎるんだゾ!」