第2章 夢ではなかった
『行こう、グリム。 こんな人に構ってる時間なんてないよ』
こういうタイプは無視するのが一番。
こちらが反応し続ける限り永遠にバカにしてくるだろう。
エースはまだ何か言い続けているが、私はそれを無視してほうきを取りせっせと落ち葉を掃き始める。
『ほら、グリムはちりとり持って』
「んじゃ、オレは君たちと違って授業あるんで! せいぜい掃除頑張ってね、おふたりさん♪」
「コイツ~~! 言わせておけば! もう怒ったゾ!」
『グリム!』
怒りが爆発してしまったグリムがエースを狙って火を吹いた。
「ふな"~~~~っ!」
「うわっ!っと、危ねぇ! 何すんだよ!」
「オレ様を馬鹿にするからだ! その爆発頭をもっと爆発させてやるんだゾ!」
どうしようどうしようどうしようどうしよう。
「やめて」と言ってもグリムが素直に従うとは思えないし、エースもやり返す気満々だ。
「へ~ぇ。 オレとやろうなんて良い度胸じゃん。 そっちこそ、全身チリチリのトイプードルにしてやる!」
コイツ、トイプードルのふわ毛をチリ毛呼ばわりしやがった。 許せん。
『グリムやっちまえ! 頭を狙うんだ! 頭を!』
「任せろ!」
「なんだケンカ?」
「いいぞ! やっちまえー!」
何事かと野次馬が集まってくる。 騒ぎがだんだん大きくなってきて煽ったことをほんの少しだけ後悔した。
まずいよこれ以上騒ぎが大きくなったら……
「そんなへろへろ火の玉当たるかってーの」
グリムが吹いた火をエースが風の魔法で払いのけていく。
攻撃を全て払いのけられた上に挑発されてグリムの怒りは頂点に。
「なんだと! 覚悟するんだゾ! くらえ!!」
「そんなん風で矛先を変えてやれば……そらっ!」
グリムが吹いた特大火の玉を払いのけるところまでは良かった。
しかし、変えた矛先が悪かった。
火の玉が吹き飛ばされた先にはハートの女王の石像。 当然、石像は真っ黒焦げに。
グリムとエースも流石にこれはまずいとケンカを即座にやめた。
ついさっき騒ぎを起こすなって言われたばかりなのにこれは非常にやばい。