第2章 夢ではなかった
到着したメインストリートを見て思わず掃除道具とグリムを落としてしまった。
「あいてっ!」
『あ、ごめん』
昨日は周りをよく見てなかったから気付かなかったけど、ここに並んでいる7つの石造のキャラクターを知っている。
どういうこと?
どれも有名なおとぎ話の悪役達だ。
なぜ彼らの石像が……?
グリムも昨日ちゃんと石像を見ていなかったようで、まじまじと眺めている。
「この石像は誰だ?」
『え、グリムこの世界に住んでるのに知らないの?』
「ウテナは知ってるのか?」
『うん、まぁ……』
「ふ~ん。 それにしてもみんなコワイ顔。 このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ」
2人で石像を眺めていると誰かに話しかけられる。
「ハートの女王を知らねーの?」
振り返ると人の好さそうな青年が立っていた。
ツンツンした鮮やかな髪色に、左目にハートの模様が描いてある。
「ハートの女王? 偉い人なのか?」
グリムの反応で察し、エースと名乗った青年が一つずつ石像の説明をしていく。
そこで彼の説明に違和感を感じた。
彼らの悪事が正当化……というか美化されている?
エースの話を聞いていると彼らの行いには理由があり、それが”悪”だと認識されていないように聞こえる。
「クールだよな~……どっかの狸と違って」
今まで感じ良くグリムに説明していたエースが急に意地悪な笑みを浮かべた。
「ふな"っ!?」
急な態度の変化に唖然とエースを見つめていると、お腹を抱えて笑いだした。
「プッ……あははっ! もう堪えるの無理だ! あはははは!」
訳が分からずただ笑うエースを怪訝な顔で見る。
「お前ら昨日入学式で暴れてた奴らだろ? 闇の鏡に呼ばれたのに魔法が使えない奴と、お呼びじゃないのに乱入してきたモンスター。 やー、入学式では笑い堪えるの必死だったわ」
「なぬ!? しっ。失礼なヤツなんだゾ!」
『そうだよ! 望んでこうなった訳じゃないのに!』
わざわざからかうためだけに話しかけてきたのかコイツ。
良い人だと思ってたのに!
「で、結局入学できずに2人して雑用係になったわけ? はは、だっせー」
掃除だろうと何事も全力で頑張るのがモットーだけど、面と向かってそういう風に言われると惨めになってくる。