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王子と悪徒の異聞奇譚

第2章 夢ではなかった


瞼に朝日の光の感じてゆっくり瞬きをする。

あれ? なんか臭い。 

辺りを見渡すと知らない部屋。
蜘蛛の巣と埃まみれでとても人が住めるような場所ではない。

なぜこんなところにいるんだろう。
まだ夢を見ている? いやそんなはずない。
今私は紛れもなく目が覚めているはず。

「ヒッヒッヒ……お前さんたち、今日は学校の掃除をしないといけないんじゃなかったっけ?」

『ぎゃーー!?』

「っふな!? なななんなんだゾ!?」

『喋ったぁああ!!』

「朝っぱらからうるせーんだゾ。 オレ様が喋れるのは当たり前なんだゾ」

夢に出てきたグリムが今目の前にいる。

……もしかしてまだ夢から覚めていない?

「お、おい!! なにをするつもりなんだゾ!?」

「俺たちの仲間になる気になったのかい?」

窓を勢いよく開け、窓枠に足をかけた。

『いい加減に夢から覚めないと。 じゃあね!』

「待つんだゾ!!」

『おわっ』

グリムに後ろへと引っ張られお尻を強打した。

『いた、い』

普通に痛い。 つまり……
呆然とグリム達を見つめていると、聞き覚えのある声が部屋へ入ってきた。

「おはようございます、2人とも。 よく眠れましたか?」

『これはやっぱり夢じゃない? 本当に異世界に来ちゃった!?』

「寝ぼけているんですか? さあ、はやく身支度を整えて! さっそく今日の仕事についての話があります」

今日のお仕事は学園の清掃だった。
魔法が使えない私にとって、一日で全てを清掃し終えるのは無理なので、

「本日は正門から図書館までのメインストリートの清掃をお願いします」

『…はい』

「はいどうぞ」と渡された清掃道具を左手に持ち、不満そうなグリムを右の小脇に抱えた。

「いいですか、ウテナくん。 昨日のような騒ぎを起こさないようグリムくんをしっかり見張っていてくださいね」

『…分かりました』

「頼みましたよ。 昼食は学食で摂ることを許可します」

”昼食は”? 

『朝食はナシですか!? 夕食は!?』

「働いた分のお金は支給しますので、ご自身で買うなり作るなりしてください」

なんて無慈悲な。 こんな場所でまともに料理ができるわけないのに!

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