第1章 夢で見た世界は
「これで最後なんだゾ! 今度こそ絶対絶対、ツナ缶よこすんだゾ!?」
グリムに再び頑張ってもらい、先ほど同様に学園長ゴーストを退治した。
「……まさかモンスターを従わせることが出来る人がいるなんて」
『いえ、従わせているというかツナ缶で釣ってるだけかと……』
やんわり否定してみるが学園長は聞こえなかったのか話し続ける。
「実は入学式騒動の時から私の教育者のカンが言っているんですよねぇ。 ウテナさんには調教師や猛獣使い的な素質があるのではないか、と」
『いえ、だから――』
再び否定しても学園長はブツブツと何かを呟いていてまったく聞いてない。
そうだ、さっきグリムに頑張れば入学を許してもらえるかもって言ったんだった。 お願いしてみよう。
『あの、グリムは一生懸命頑張ったんです。 ここに一緒に置いてもらえませんか? あとやれば出来る子なので入学できちゃったりしないかなぁ~って……』
「なんですって? モンスターを?」
「オマエ……」
私の予想外の言動にグリムがきょとんとこちらを見上げる。
『いつ帰れるのか分かりませんし……それにまたゴーストが出たら怖いじゃないですか! なのでどうかお願いします!』
「……仕方ありませんね。 いいでしょう」
「ふな"っ!? 本当かっ!?」
「しかし、闇の鏡に選ばれなかった……しかもモンスターの入学を許可するわけにはいきません」
グリムがシュンと耳と尻尾を垂れた。
「ウテナさんについても、元の世界へ戻るまでただ居候をさせるわけにはいかない」
「なんだぁ……ぬか喜びだゾ……」
「話は最後まで聞きなさい」
そう言って学園長が提案したのは、ここを宿として使わせてもらえることだった。 一応無料で。
しかし、衣食に関しては学内整備などの雑用をこなして支払わなければならない。
つまり、二人一組で『雑用係』として学園に置いてくれるという。
新入生でもないのに追い出されないのは、私の魂を呼び寄せてしまったことに闇の鏡を所有する学園側にも責任の一端があるという理由だった。
「雑用係として特別に学内に滞在することを許可してさしあげましょう。 元の世界に帰るための情報集めや学習のために図書館の利用も許可しましょう。 私、優しいので。 ただし仕事が終わってからですよ」