第1章 夢で見た世界は
「ヒ、ヒィ~~~! 消されちまう! 逃げろ~~っ!!」
グリムの奮闘のお陰でゴースト達が壁をすり抜けて退散していく。
「あ、あれ? 勝っ……た?」
『やったねグリム! ゴースト達が逃げていくよ!』
グリムを抱き上げてくるくる回る。
「ハヒ、ヒィ……こ、怖かっ……あいや、ぜんぜん怖くなかったんだゾ!」
『凄くかっこよかったよ。 ちょっと見直した』
「これぐらいグリム様にかかればチョロいんだゾ! どうだお化けめ! 参ったか!」
勝利を喜んでいると学園長が現れた。
「こんばんはー。 優しい私が夕食をお持ちしましたよ―――って、それは先ほど入学式で暴れたモンスター! 追い出したはずなのに、何故ここに!?」
「オレ様がお化け退治してやったんだゾ! 感謝しろっ!」
「どういうことです?」
学園長に先程の出来事を説明する。
「そういえばこの寮には悪戯好きのゴーストが住み着き、生徒たちが寄りつかなくなって無人寮になっていたのを忘れていました」
『え!? 忘れられることなんですかそれ!』
「いや~私もなにかと忙しいので。 しかし、ふぅむ……2人が協力してゴーストを追い出してしまうとは」
「協力とは聞き捨てならねーんだゾ。 ソイツはほとんど見てただけだったし? オレ様はツナ缶が欲しくてやっただけだし?」
素直じゃないな、もう。
「って、あ! オレ様まだツナ缶もらってねーゾ!」
ツナ缶をよこせとグリムが足にしがみついてきた。
ちょ、爪たてないで! 地味に痛んだから!
『買ったらちゃんとあげるから!』
首根っこを掴んで引き離そうとしていると、学園長が真剣な声音で話し始めた。
「おふたりさん。 ゴースト退治をもう一度見せてもらえます? ゴースト役は私がしますので。 私に勝てたらツナ缶を差し上げましょう。 私、優しいので」
そう言って学園長は小瓶をポケットから取り出すとごっくんと一口で中の液体を飲み干す。
すると瞬く間に先程のゴーストと同じ姿へと変身していた。
「えぇ~嫌なんだゾ」
グリムは私に指図されるのが嫌らしく、面倒くさそう断った。
しゃがんでそっと耳打ちする。
『勝てたら入学を許してもらえるかもよ? そのうえツナ缶までもらえちゃうなんて……チャンスですぜ旦那』