第1章 夢で見た世界は
「ここに住んでた奴らは俺たちを怖がってみーんな出ていっちまった」
「俺たちずっと新しいゴースト仲間を探してたんだ。 お前さん、どうだい?」
現れたお化け達の言葉にゾッとした。
それってつまり私を殺すってこと!? 絶対にお断りだ!
「あ! 逃げたぞ!」
気合で起き上がって廊下を突っ走る。
「ふな~~~!!」
背中にしがみついているグリムが情けない悲鳴を上げる。
「おいウテナ! もっと速く走るんだゾ! あいつらに追い付かれちまう!!」
『そんなの分かってるって―――うわッ!』
ガラクタに躓いてそのまま床へダイブしてしまった。
その衝撃でグリムが目の前に放り出される。
「おいかけっこはもう終わりかな~?」
迫りくるお化けから再び逃げようとグリムへ手を伸ばす。
「大人しく仲間になってもらおうか」
もう逃げられない! こうなったら―――
『くらえ! 猫ビーム!!』
「!? ふ、ふんな"~~~ッ!!」
グリムを目の前に持ち上げてみたら、反射的に火を吹いてくれた。
しかし、あと一歩のところで避けられてしまった。
「ちくしょー! 出たり消えたりするんじゃねー!」
攻撃が当たらないのが気に入らないらしく、さっきまでの恐怖心はどこえやらといった感じで夢中で火を吹いている。
『そんなむやみに火を吹いたって当たらないよ! 火事になっちゃう!』
「うるせーっ! オレ様に指図するんじゃねーんだゾ!」
『彼らを追い払えれば学園長を見返せるかもよ! おまけにツナ缶もあげちゃう!』
「なぬっ……!? オレ様は天才なんだゾ。 こんなヤツら一人でも……」
再びゴーストに狙いを定めたグリムだったが、左右から別のゴーストが現れて狼狽えている。
「オマエらたくさんいて卑怯だゾ!」
『グリム! ここは一緒に協力しよう! あっちも複数なんだし! あとツナ缶もう1缶あげちゃうよ!』
「よし! オマエはお化けがどこにいるかオレ様に教えるんだゾ!」
『まかせて!』
グリムと協力して、四方八方から迫りくるゴースト達を丸焼きにしていく。 実際には焼かれてないけど。
そして私は気付いてしまった。 グリムが火を吹く時に目を瞑り、体をくの字に曲げて力んでいる姿が可愛いことに。