第23章 囚われた英雄
仕方がない状況ではあるものの、胸元に顔があると思うだけでなんだか変に緊張してきた。
これは脱出のためなんだと自分に言い聞かせ、どうにか平静を保つ。
「これは?」
「ち、がうっ!もっと左……そっちじゃない、私からみてひだりっ」
「視覚に頼れないと、こうも難しいものなのか…」
確実に胸に顔があたっているけれど、見えていないうえにピュアなNは動揺をまったく見せず、私ひとりがあたふたしている。
そんな苦悩と葛藤に堪えて数分後、かちりと金属に歯が触れる音がした。
「見つけた」と呟いたNは、ゆっくりと頭を下げる。下に引かれる力に身体が引っ張られないよう、壁に体重を預けた。
気を抜いたら声が出てしまいそうで、息を止めながら待っていると、
「できたよ」
ようやくこの時間に終わりが訪れた。
(死ぬかと思った…)
身体を傾けると、開いたパーカーからころんとボールが床に落ち、反動でトゲピーが出てくる音がした。
「チョケ…?」
「トゲちゃん、急にこんなところに出してごめんね」
「チ、チョケプ……」
トゲピーは目の前に広がる真っ暗闇に今にも泣き出しそうな気配。それをNが優しい声であやす。
「怖がらせてすまない。けど、ボクとナナがいるから安心してほしい」
「チョケプリ!」
Nが大好きなトゲピーは、声を聞くだけで嬉しそうな声を上げた。
「キミの力が必要なんだ。ボクたちに協力してくれるかい?」
「プリ…!」
と、かわいくお返事した時、ちょうど倉庫の扉が開かれた。
(トゲちゃん!隠れて!)
入り口の小さな明かりが灯され、プラズマ団のひとりがこちらへ近づいてくる。顔に向けられた懐中電灯の眩しさにギュッと目を閉じた。