第23章 囚われた英雄
「ねぇ、N」
「なんだい?」
手足を縛られているので、確かめるにはNに頼むしかない。
「パーカーの内ポケットに、トゲちゃんのモンスターボールあるかも」
ハッとしたようにNが顔を上げる気配がした。
「…そうか!服の中だからバレなかったんだね」
「探してみよう」と前向きなNと共に、内ポケットのモンスターボールを出そうと、暗闇の中手探りで試行錯誤する。
けれど、ふたりとも手足を縛られているため、簡単にはいかない。
Nに頼んで、後ろ手でパーカーのジッパーを引っ張ってもらう作戦を試してみたけど、くすぐったくて変な声が漏れてしまった。
「ふ…ふふ、そこ、ちがうっ、N」
「すまない、暗いからどこに触れているか見えなくて」
ジッパーを探す指先が、胸の際どいところをかすめてドキリとした。
「あの、もうちょっと、左…」
「ここかい?」
「ち、がぅ、反対」
「そうか、キミから見て左だね」
「や、いきすぎ、もどって」
いろんな意味でギリギリなやり取りを続けたあと、Nがようやくジッパーを掴んだ。けれど手首をがっしり固定されているため、引き下ろすのが難しいらしい。しばらくして、Nは諦めたように手を離した。
「ボクらは、手も足も拘束されている。しかしひとつだけ自由な部分がある」
「というと?」
「口を使ってもいいかい?」
「ジッパーを噛むってこと?」
「そうさ。制約下での最適解を選ぶんだ」
最適解が口?と疑問に思ったものの、私の何倍も頭がいいNの提案ならうまくいくかもしれない。
「Nがそう言うなら試してみようか」
「なら、壁に背中をつけてくれるかい?」
「うん」
頭をぶつけないよう気をつけながら、慎重に背筋を伸ばして顎を引いた。