第23章 囚われた英雄
連れてこられたのは、木箱とコンテナだらけの倉庫。
明かりはなく、手足の自由と荷物も奪われ、何もできないまま時間だけが過ぎていく。
夜なのか朝なのか、それすらもうわからなくなっていた。
「ナナ、さっきはアリガトウ」
暗闇の中でぽつりとNの声が響いた。
「私、何かしたっけ?」
「ボクのために怒ってくれただろう?」
「とても嬉しかった」と続けたNの声はどこか儚かった。
「あんなことを言われても、まだボクはゲーチスを父親だと思っていると言ったら、キミは呆れるかい?どうせまた利用されるだけだと…」
「ううん。簡単に割り切れるものではないと思う。だって親子ってそういうものでしょ?」
「やはり、キミは否定しないんだね」
「呆れもしないし否定もしないよ。でも、そのNの気持ちを利用しようとするゲーチスは許せない」
Nはその後何も言い返してこなかった。
傷つけてしまっただろうか。
そう思い、次にどんな言葉をかけようか考え込んでいると、ふいに肩が触れた。
離れようとした私を、Nが呼び止める。
「すまない。少しだけ……こうしていてもいいかい?」
Nがそっと肩を寄せてくる。壁に背中をつけたまま、私たちは互いに寄り添う姿勢になった。
「キミの存在を確認できると落ち着くんだ。不思議とね」
「うん、私の肩ごときで落ち着くなら…」
いつもは近いとドキドキしてしまうのに、今はなぜだか心臓がおとなしい。
たぶんそれは、Nの心があまりにも純粋で、まるで、傷ついた小さな子どものように感じたからかもしれない。