第23章 囚われた英雄
「いくら教育を施したとて……、やはり、バケモノには理解が及ばぬということか……」
氷の刃のように、冷たく非道な言葉だった。
Nは心を閉ざし、黙り込んでしまう。
私が出会った人間史上、大嫌いかつ苦手な人トップ3に確実に入る男、ゲーチス。
その姿を見るだけで嫌悪感と恐怖で背筋が凍りつく。けれど、この人は私の大切な仲間であるNの父親でもある。
こんな時、グリーンならどうするだろう?
グリーンならきっと、自分のことを度外視して仲間を守ろうと戦うはずだ。
そう思うと、不思議と勇気が湧いてきた。
おくびょうな自身を奮い立たせて、震える唇を開く。
「え、Nはっ…!」
私が声を発すると、ゲーチスがゆっくりと顔をこちらに向けた。
「Nは…っ、ポケモンと人の分断を望んでいません!お願いです。これ以上もうNを苦しめないでください…!」
汚い物でも見るような冷徹な視線は、目が合うだけで血の気が引く。
だけど、まだ言いたいことを伝えきっていない。
恐怖が頭の中を覆い尽くす中、それでも言葉を必死に紡いだ。
「あなたが、本当にNの父親なら、世界征服とか言う前にNをもっと見てほしい!Nはあなたの道具じゃない!」
すうと息を吸い込んで、声を張り上げた。
「……Nは…バケモノなんかじゃない!」
「ナナ…キミは…」
Nの虚ろな目に、かすかに光が戻った気がした。