第23章 囚われた英雄
「おやおや…まだそんな戯言を…」
ゲーチスは、低く、くぐもった声で喉の奥を鳴らした。その不気味さに、思わず身震いする。
「ポケモンは道具であり兵器なのです。その力を独占するのはワタクシだけでいい…!そして、パシオという島でもう一度、ワタクシが思い描いた野望を叶える!これこそが、ワタクシの世界征服への第一歩なのです…!」
ゲーチスは漆黒のマントをばさりと翻し、哄笑を響かせた。
Nは、悲しみと悔しさを滲ませた顔つきで俯いている。
そんなNに向かい、ゲーチスが手を差し伸べた。
「息子よ。この間のことは水に流し、今一度親と子としてやり直しませんか?」
「アナタは、まだそんなことを…!」
「世間のくだらぬ思想に囚われたお前は見るに堪えません。ワタクシの悲しみがわかりますか?お前が幼い頃より、人々を導く王として教育し、育て上げたのを裏切られた父親の気持ちが……!」
悲しみと呼ぶにはあまりにも白々しいほどの憎悪をその瞳に滲ませながら、ゲーチスは嘆息した。
「ワタクシの言わんとすることを理解するよう努めるのです。さすればまたプラズマ団の王として、お前を迎え入れてやりましょう」
「いえ、ボクはもう、プラズマ団には戻りません…」
Nはゲーチスの誘いを拒絶する。けれどその虚ろな目は戸惑いを隠しきれていなかった。
「何を迷うことがあるのです?森でポケモンと暮らしていたお前を保護して、誰がここまで育ててやったと思っているのですか?」
「それは…感謝しています…。ですが、わかってください。アナタのやろうとしていることは間違っている…!」
Nはなおも拒み続ける。すると、ゲーチスはワザとらしくかぶりを振った。
「やはり、ワタクシに逆らうのか……N。 父として、とても残念ですよ……」
声音に悲しみと失望を混ぜるゲーチス。明らかに演技なのに、それだけでNは瞳を悲しみで曇らせて項垂れてしまった。
またゲーチスは、親と子という立場を盾にして、Nを利用しようとしている。
この人は、何度Nを傷つければ気が済むのだろう。