第4章 Ever green③
スタジアムの歓声が最高潮に盛り上がりを見せ、言いようのない緊張感に包まれる中、
「レッド!」
グリーンがライバルの名を呼んだ。
レッドは応えるようにグリーンへ視線を向ける。
「オレは、あの日を忘れたことは片時もない。チャンピオンを奪われた悔しさが、最強を証明された瞬間が、常にオレの心の片隅で燻ってんだ」
レッドは口を結んだまま、帽子のつばを掴みグリーンを睨み据えて頷く。
すると突然、グリーンが私の手を掴んだ。繋がれた手を突き出すように前方へ向けると、レッドの表情が一層険しくなった。
「オレが何を言いたいかわかるよな?」
グリーンは結んだ手の指を絡ませて首を傾けながら挑発的な眼差しを向ける。刹那、レッドの瞳が大きく見開き、ついに固く閉じていた口を開いた。
「………勝つのは…僕だ!!」
レッドが叫んだと同時にリザードンが先制攻撃を仕掛けてきた。
「もう何も譲らねぇ!!」
すかさずグリーンが後退しながらカメックスに指示を出す。その隙に私はサンダースの背後へと移動して臨戦態勢を取る。
リザードンのかえんほうしゃに対し、カメックスは甲羅から飛び出したキャノンで水流を噴射して相殺する。
リザードンは水流を避けながら大きく羽ばたき空中へ舞った。
「ハハッ!楽しもうぜ!!」
グリーンの瞳がキラキラしている。レッドとの再戦を待ち侘びていたかのように。
「盛り上がってるとこ悪いけど、私もいるのを忘れないでよね!」
死角から、リーフちゃんのフシギバナが刃のように鋭い葉をカメックス目掛けて繰り出した。
すごい。3人のスピードにまるでついていけていない。ポケモン達の動きを目で追うので精いっぱいだ。
「カメックス!リザードンを逃すな!」
グリーンは迫り来るフシギバナの攻撃を無視して、リザードンへの追撃指示を出している。守らないと!カメックスを、グリーンを!
「サンダース!フシギバナの攻撃を打ち落として!」
「キュイイイ!」
サンダースは、毛並みをでんきで鋭く尖らせて針状にし、ミサイルのように発射した。針はフシギバナの葉に次々に穴を開ける。はらはらと葉が舞い落ちる中、生み出された針はホーミングミサイルのように、フシギバナを追尾し前足に的中した。フシギバナの体勢がぐらつく。
グリーンが一瞬笑顔で私に目配せをした。